令和2年(2020)本試験

105

時効過去問

この問題の全体像

本問は時効制度に関する総合的な知識を問う問題である。時効の援用権者の範囲、裁判上の請求による時効の更新、権利の承認の効果、夫婦間の時効の特則の4つの論点から構成され、特に時効の更新と進行の違いを正確に理解しているかが問われている。

令和2年105
時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  • 1消滅時効の援用権者である「当事者」とは、権利の消滅について正当な利益を有する者であり、債務者のほか、保証人、物上保証人、第三取得者も含まれる。
  • 2裁判上の請求をした場合、裁判が終了するまでの間は時効が完成しないが、当該請求を途中で取り下げて権利が確定することなく当該請求が終了した場合には、その終了した時から新たに時効の進行が始まる。
  • 3権利の承認があったときは、その時から新たに時効の進行が始まるが、権利の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないことを要しない。
  • 4夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6箇月を経過するまでの間は、時効が完成しない。

この問題の詳しい解説

POINT
この問題のポイント
本問は時効制度に関する総合的な知識を問う問題である。
この問題は、6 つの視点でさらに深掘りできます
02
深度分析
本問は時効制度に関する総合的な知識を問う問題である。時効の援用権者の範囲、裁判上の請求による時効の更新、権利の承認の効果、夫婦間の時…
03
知識背景
時効制度は、一定期間の経過により権利を取得または消滅させる制度である。取得時効と消滅時効があり、本問は主に消滅時効を扱う。時効の完成…
04
覚え方
「取り下げ=なかったこと」で覚える。裁判上の請求を取り下げると、時効更新は「なかったこと」になる。つまり、時効期間はずっと進んでいた…
05
試験のコツ
時効期間の長さと起算点を問う問題 ・時効の更新事由と完成猶予事由の区別 ・援用権者の範囲を問う問題
06
実務での見え方
不動産取引において、売買代金債権の消滅時効が問題となる場面で活用される。例えば、買主が代金未払いのまま長期間経過した後、売主が訴訟を…
07
よくある間違い
{"mistake":"裁判上の請求の取下げ後、「新たに時効の進行が始まる」と誤解する。","why_wrong":"民法149条の…
02深度分析
要約
本問は時効制度に関する総合的な知識を問う問題である。時効の援用権者の範囲、裁判上の請求による時効の更新、権利の承認の効果、夫婦間の時効の特則の4つの論点から構成され、特に時効の更新と進行の違いを正確に理解しているかが問われている。
法的根拠
民法147条(時効の更新)民法149条(裁判上の請求等)民法152条(権利の承認による時効の更新)民法159条(夫婦間の権利の時効の特則)
論理の流れ
正解にたどり着くには、まず各選択肢の法的根拠を確認する。選択肢2について、民法149条は「裁判上の請求が取り下げられたときは、時効の更新がなかったものとみなす」と規定しており、取り下げ時から新たに進行が始まるのではなく、最初から更新がなかったことになる。この「更新の遡及的消滅」という点が誤りであると判断できる。
重要な区別
最も重要な区別は「時効の更新がなかったものとみなされる」ことと「新たに時効の進行が始まる」ことの違いである。前者は時効期間の進行が継続していたことになるのに対し、後者は一からやり直しとなる。
各選択肢のポイント
  • 民法147条の「当事者」について判例は正当な利益を有する者と解し、保証人、物上保証人、第三取得者を含むとしている。正しい記述である。
  • 民法149条により、裁判上の請求の取下げは「時効の更新がなかったものとみなされる」ため、時効期間は継続して進行していたことになり、新たな進行開始ではない。
  • 民法152条2項が「承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないことを要しない」と明記しており、正しい記述である。
  • 民法159条が夫婦間の権利について婚姻解消から6箇月間は時効が完成しないと規定しており、正しい記述である。
03知識背景
テーマ概要
時効制度は、一定期間の経過により権利を取得または消滅させる制度である。取得時効と消滅時効があり、本問は主に消滅時効を扱う。時効の完成を妨げる事由として更新と完成猶予があり、裁判上の請求や権利の承認が重要な更新事由となる。
歴史的背景
時効制度は古代ローマ法に起源を持ち、日本では明治民法で導入された。2017年の民法改正で時効制度が大幅に見直され、時効期間の短縮や更新事由の明確化が図られた。改正法は2020年4月に施行されている。
関連法令
民法147条(時効の更新)民法148条(時効の完成猶予)民法149条(裁判上の請求等)民法152条(権利の承認による時効の更新)
体系的位置づけ
民法総則中の条件・期間・時効の単元に位置づく。時効は物権、債権など民法全体に関わる基本制度であり、宅建試験では毎年必ず出題される重要論点である。
前提知識
時効の基本概念(取得時効と消滅時効の違い)、時効期間の長さ、時効の更新と完成猶予の違い、援用権者の意義、裁判上の請求の効果などを理解している必要がある。
04記憶テクニック
語呂合わせ
「取り下げ=なかったこと」で覚える。裁判上の請求を取り下げると、時効更新は「なかったこと」になる。つまり、時効期間はずっと進んでいたことになり、債権者にとって不利な結果となる。
ビジュアル描写
時効の進行を「走り続ける時計」としてイメージする。裁判上の請求で時計が止まるが、取下げで「止まっていなかった」ことになり、時計は最初から動き続けていたことになる。
重要公式
取下げ=更新なし=期間継続進行。承認=更新あり=新規進行開始。夫婦間=6箇月の完成猶予。
関連連想
「取り消し」と「取り下げ」を混同しない。取り下げは原告の意思で請求を撤回することで、時効更新の効果が消滅する。
比較表
時効の更新:完成した時効が消滅し、新たに進行開始。時効の完成猶予:完成が延期されるのみ。取下げの効果:更新がなかったものとみなされ、期間進行は継続。
05試験テクニック
出題頻度
時効制度は毎年何らかの形で出題される頻出論点である。特に時効の更新・完成猶予は高頻度で問われる。
重要度
A:最重要。時効は民法の基本制度であり、実務でも頻繁に問題となる。確実に理解しておく必要がある。
出題パターン
  • 時効期間の長さと起算点を問う問題
  • 時効の更新事由と完成猶予事由の区別
  • 援用権者の範囲を問う問題
解法・消去法
「新たに進行が始まる」という表現が出たら要注意。時効の更新と「更新がなかったものとみなされる」の違いを意識して消去法を適用する。
時間戦略
時効問題は条文知識があれば1分以内で解ける。各選択肢の条文根拠を素早く確認し、明らかな誤りを見つけたら即座に解答する。
06実務応用
実務シナリオ
不動産取引において、売買代金債権の消滅時効が問題となる場面で活用される。例えば、買主が代金未払いのまま長期間経過した後、売主が訴訟を提起したが取り下げた場合、時効の進行状況を正確に判断する必要がある。
実務への影響
時効制度の理解は、債権回収の可否を判断する上で極めて重要である。訴訟の取り下げが時効に与える影響を誤解すると、回収不可能な債権を追い続けるリスクがある。
ケーススタディ
AがBに土地を売却し、代金1000万円の支払を請求したがBが支払わなかった。5年後、Aが訴訟を提起したが、諸事情で取り下げた。この場合、取り下げ時から新たに時効が進行するのではなく、最初から時効期間が進行していたことになるため、Aは時効完成のリスクに直面する。
業界関連性
不動産業界では、売買代金、賃料、媒介報酬などの債権の時効管理が重要である。時効の更新と完成猶予の違いを理解することで、適切な債権回収戦略を立てられる。
ニュース連動
消費者金融やクレジットカード会社の時効に関する訴訟が話題になることがある。債権回収業者の適正化法との関連でも時効制度の重要性が増している。
07よくある間違い
裁判上の請求の取下げ後、「新たに時効の進行が始まる」と誤解する。
なぜ間違えるか:民法149条の「更新がなかったものとみなす」の意味を正確に理解していない。みなされるという法的擬制の効果を誤認している。
時効の「更新」と「完成猶予」を混同する。
なぜ間違えるか:両者の法的効果の違いを正確に理解していない。どちらも時効完成を遅らせる効果があるが、その性質が異なる。
権利の承認について、行為能力が必要と誤解する。
なぜ間違えるか:承認が権利処分の一種と考え、行為能力が必要だと推測してしまう。民法152条2項の特則を知らない。
解説は、まだ続きます
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