令和2年(2020)本試験

206

錯誤過去問

この問題の全体像

本問は民法95条の錯誤による取消しが認められる要件を問う問題である。要素の錯誤、表示された動機の錯誤、表意者の重過失の有無、相手方の正当な信頼保護の観点から各選択肢を検討し、双方が同一の錯誤に陥っている場合の取消し可否を判断する。

令和2年206
AとBとの間で締結された売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、売買契約締結後、AがBに対し、錯誤による取消しができるものはどれか。
  • 1Aは、自己所有の自動車を100万円で売却するつもりであったが、重大な過失によりBに対し「10万円で売却する」と言ってしまい、Bが過失なく「Aは本当に10万円で売るつもりだ」と信じて購入を申し込み、AB間に売買契約が成立した場合
  • 2Aは、自己所有の時価100万円の壺を10万円程度であると思い込み、Bに対し「手元にお金がないので、10万円で売却したい」と言ったところ、BはAの言葉を信じ「それなら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
  • 3Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
  • 4Aは、自己所有の腕時計を100万円で外国人Bに売却する際、当日の正しい為替レート(1ドル100円)を重大な過失により1ドル125円で計算して「8,000ドルで売却する」と言ってしまい、Aの錯誤について過失なく知らなかったBが「8,000ドルなら買いたい」と言って、AB間に売買契約が成立した場合

この問題の詳しい解説

POINT
この問題のポイント
本問は民法95条の錯誤による取消しが認められる要件を問う問題である。
この問題は、6 つの視点でさらに深掘りできます
02
深度分析
本問は民法95条の錯誤による取消しが認められる要件を問う問題である。要素の錯誤、表示された動機の錯誤、表意者の重過失の有無、相手方の…
03
知識背景
錯誤とは、表意者が意思と異なる意思表示をし、それを認識していない状態をいう。民法95条は、意思表示が法律行為の要素に關する錯誤に基づ…
04
覚え方
「錯誤取消し三条件:要素の錯誤、重過失なし、相手方保護」で覚える。要素=性質・当事者・物、重過失=重大な不注意、相手方保護=正当な信…
05
試験のコツ
要素の錯誤と評価の錯誤の区別を問う問題 ・表意者の重過失の有無を問う問題 ・表示された動機の錯誤を問う問題
06
実務での見え方
不動産売買において、物件の面積や権利関係を誤認して契約した場合、錯誤による取消しが問題となる。実務では、重要事項説明書の不備が錯誤の…
07
よくある間違い
{"mistake":"価格の評価に関する錯誤を要素の錯誤と混同し、取消し可能と判断してしまう。","why_wrong":"「時価…
02深度分析
要約
本問は民法95条の錯誤による取消しが認められる要件を問う問題である。要素の錯誤、表示された動機の錯誤、表意者の重過失の有無、相手方の正当な信頼保護の観点から各選択肢を検討し、双方が同一の錯誤に陥っている場合の取消し可否を判断する。
法的根拠
民法95条1項民法95条2項民法95条3項民法95条4項
論理の流れ
まず錯誤の種類を分類する。選択肢1と4は表意者Aに重大な過失があり、民法95条4項により取消しできない。選択肢2は動機の錯誤だが、価格の評価に関する錯誤は要素の錯誤に該当しない。選択肢3は物の性質の錯誤であり、かつ表示された動機の錯誤として要素の錯誤に該当し、Aに重過失もないため取消しが認められる。
重要な区別
最も重要な区別は、表意者に重大な過失があるかどうか、および錯誤が「要素」に関するものかどうかの判断である。民法95条4項は表意者に重大な過失があれば取消しを認めない。
各選択肢のポイント
  • Aに重大な過失があるため、民法95条4項により錯誤による取消しはできない。相手方Bが無過失であっても、表意者の重過失が取消しを阻却する。
  • 価格の評価に関する錯誤は要素の錯誤に該当しない。時価を誤認しただけでは、法律行為の基礎となる重要な部分の錯誤とはいえない。
  • 物の性質の錯誤であり、表示された動機の錯誤として要素の錯誤に該当する。Aに重過失がなく、Bも同一の錯誤にあったため取消しが認められる。
  • Aに重大な過失があるため、民法95条4項により錯誤による取消しはできない。計算の錯誤であっても、重過失があれば保護されない。
03知識背景
テーマ概要
錯誤とは、表意者が意思と異なる意思表示をし、それを認識していない状態をいう。民法95条は、意思表示が法律行為の要素に關する錯誤に基づくときは、その意思表示を取り消すことができると定める。ただし、表意者に重大な過失がある場合は取消しできない。
歴史的背景
民法95条は2017年の民法改正で大幅に改正された。従来は「要素の錯誤」という概念が不明確であったが、改正により表示された動機の錯誤も含めて明文化され、表意者の重過失による取消し制限も明確化された。
関連法令
民法95条1項(要素の錯誤)民法95条2項(表示された動機の錯誤)民法95条3項(取消しの効果)民法95条4項(重過失による制限)
体系的位置づけ
民法総則の「意思表示」の分野に位置づけられる。宅建試験では毎年のように出題される重要論点であり、契約の有効性・取消しの理解に不可欠である。
前提知識
意思表示の瑕疵に関する概念(錯誤、詐欺、強迫)の基本理解が必要。特に、動機の錯誤と表示された動機の錯誤の区別、要素の錯誤の意義、重過失の判断基準を理解しておく必要がある。
04記憶テクニック
語呂合わせ
「錯誤取消し三条件:要素の錯誤、重過失なし、相手方保護」で覚える。要素=性質・当事者・物、重過失=重大な不注意、相手方保護=正当な信頼。
ビジュアル描写
錯誤の判断フローチャートをイメージ。①錯誤の種類確認→②要素に関するか→③表示された動機か→④重過失の有無→⑤相手方の正当な信頼の各段階を段階的に判断。
重要公式
錯誤取消し=要素の錯誤+重過失なし+相手方に正当な信頼なし(ただし相手方が同一錯誤なら取消し可能)
関連連想
「贋作を本物と勘違い」は典型的な要素の錯誤。「価格を安いと勘違い」は評価の錯誤で取消し不可。この対比で覚える。
比較表
要素の錯誤:物の性質・当事者・数量など→取消し可能。評価の錯誤:価格の思い込み→取消し不可。動機の錯誤:表示されれば取消し可能、表示なければ不可。
05試験テクニック
出題頻度
毎年出題される頻出論点である。錯誤、詐欺、強迫のいずれかが必ず出題される。
重要度
A:最重要。意思表示の瑕疵は民法の基礎であり、宅建試験の得点源として必須の知識である。
出題パターン
  • 要素の錯誤と評価の錯誤の区別を問う問題
  • 表意者の重過失の有無を問う問題
  • 表示された動機の錯誤を問う問題
解法・消去法
「重大な過失」「重過失」の文言があれば取消し不可と判断し消去する。評価の錯誤(価格の思い込み)も取消し不可で消去できる。残った選択肢を詳細に検証する。
時間戦略
錯誤の問題は判断フローに従って機械的に処理する。重過失の有無を先に確認し、次に要素の錯誤かどうかを判断すると時間短縮できる。
06実務応用
実務シナリオ
不動産売買において、物件の面積や権利関係を誤認して契約した場合、錯誤による取消しが問題となる。実務では、重要事項説明書の不備が錯誤の主張につながる可能性がある。
実務への影響
宅建業者は、取引物件の正確な情報提供を怠ると、後日の錯誤による取消し主張を招く恐れがある。重要事項説明の徹底が契約の安定性を確保する。
ケーススタディ
中古住宅の売買で、シロアリの被害があることを売主が知らずに契約した場合、買主は錯誤を主張できる可能性がある。ただし、売主に重過失がなければ取消しが認められる。
業界関連性
不動産取引では物件情報の認識不一致が生じやすく、錯誤の問題は実務上極めて重要である。契約書の作成や重要事項説明において細心の注意が必要。
ニュース連動
近年、中古物件の欠陥問題や面積誤記の問題がニュースで取り上げられる。これらは錯誤の問題として法的に処理される可能性がある。
07よくある間違い
価格の評価に関する錯誤を要素の錯誤と混同し、取消し可能と判断してしまう。
なぜ間違えるか:「時価を安いと思い込んだ」だけでは、法律行為の基礎となる重要な部分の錯誤とはいえない。評価の錯誤は取消しの対象外である。
相手方に過失がない場合、表意者の重過失があっても取消し可能と誤解する。
なぜ間違えるか:民法95条4項は、表意者に重大な過失がある場合、相手方の過失の有無にかかわらず取消しを認めないと明記している。
動機の錯誤はすべて取消し不可と誤解する。
なぜ間違えるか:改正民法は、表示された動機の錯誤について、意思表示の内容とみなして要素の錯誤として取り扱うことを明文化した。
解説は、まだ続きます
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