令和6年(2024)本試験
問5
履行遅滞過去問
この問題の全体像
履行遅滞の成立時期を問う問題。不法行為、不当利得、相殺、不確定期限の各場面で、債務者がいつから遅滞責任を負うかを民法412条等の規定に基づき判断する。善意の受益者の不当利得返還債務は履行請求時から遅滞責任を負う点が正解。
履行遅滞に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 1不法行為の加害者は、不法行為に基づく損害賠償債務について、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
- 2善意の受益者は、その不当利得返還債務について、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
- 3請負人の報酬債権に対して、注文者がこれと同時履行の関係にある目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬残債務について、当該残債務の履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
- 4債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った後に履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
この問題の詳しい解説
POINT
この問題のポイント
履行遅滞の成立時期を問う問題。
この問題は、6 つの視点でさらに深掘りできます
02
深度分析
履行遅滞の成立時期を問う問題。不法行為、不当利得、相殺、不確定期限の各場面で、債務者がいつから遅滞責任を負うかを民法412条等の規定…
03
知識背景
履行遅滞とは、履行が可能であるのに債務者の責め帰すべき事由により履行期を経過しても履行しないこと。遅滞責任の開始時期は、確定期限・不…
04
覚え方
「不確定期限は知った時、確定期限は到来時、期限なしは請求時。不法行為は即時、善意利得は請求時、悪意利得は受領時。」この順で遅滞開始時…
05
試験のコツ
遅滞責任開始時期の正誤判定
・不法行為・不当利得との組み合わせ問題
・同時履行抗弁権と遅滞責任の関係
06
実務での見え方
不動産売買で買主が代金支払を遅延した場合、いつから遅滞損害金が発生するか。確定期限ある契約なら期限到来時から。期限なき契約なら請求時…
07
よくある間違い
{"mistake":"不法行為の損害賠償債務でも履行請求時から遅滞責任が始まると誤解する。","why_wrong":"一般原則(…
02深度分析
要約
履行遅滞の成立時期を問う問題。不法行為、不当利得、相殺、不確定期限の各場面で、債務者がいつから遅滞責任を負うかを民法412条等の規定に基づき判断する。善意の受益者の不当利得返還債務は履行請求時から遅滞責任を負う点が正解。
法的根拠
民法412条民法412条の2民法412条の3民法704条民法509条
論理の流れ
履行遅滞の成立時期は債務の性質により異なる。確定期限ある債務は期限到来時、不確定期限ある債務は期限到来を知った時、期限なき債務は履行請求時から遅滞責任を負う。不法行為は不法行為時、不当利得は善意者なら請求時、悪意者なら受領時から責任を負う。各選択肢をこれら原則に照らし判定する。
重要な区別
不法行為債務と不当利得返還債務の遅滞責任開始時期の違い。不法行為は「不法行為時」、善意の不当利得は「履行請求時」から責任開始。この対比が本問の核心。
各選択肢のポイント
- 不法行為の損害賠償債務は、履行請求を待たず不法行為の時から遅滞責任を負う(民法412条の3第1項)。
- 善意の受益者の不当利得返還債務は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う(民法412条の3第2項)。正解。
- 同時履行抗弁権が存在する場合、その範囲内では履行遅滞の責任を負わない。相殺適状であれば相殺の遡及効により遅滞責任を免れる。
- 不確定期限ある債務は、期限到来を知った時から遅滞責任を負う(民法412条の2)。履行請求を待つ必要はない。
03知識背景
テーマ概要
履行遅滞とは、履行が可能であるのに債務者の責め帰すべき事由により履行期を経過しても履行しないこと。遅滞責任の開始時期は、確定期限・不確定期限・期限なき債務で異なり、不法行為や不当利得では特則がある。民法412条群が規定する重要制度。
歴史的背景
民法412条は2017年改正で大幅に整理された。従来の3項構成から412条、412条の2、412条の3へと独立条文化。不法行為と不当利得に関する特則が明文化され、判例法理が条文に取り入れられた。
関連法令
民法412条(確定期限ある債務)民法412条の2(不確定期限ある債務)民法412条の3(不法行為等)民法704条(悪意の受益者の返還義務)民法415条(債務不履行の効果)
体系的位置づけ
債権総論における債務不履行の核心的分野。履行遅滞は契約責任の基本概念として、宅建試験で頻出。特に遅滞責任の開始時期は判例・条文とも重要。
前提知識
債務不履行の三類型(履行遅滞・履行不能・不完全履行)の理解、期限の種類(確定期限・不確定期限・期限の定めなし)、同時履行の抗弁権、相殺の遡及効、善意・悪意の受益者の区別が必要。
04記憶テクニック
語呂合わせ
「不確定期限は知った時、確定期限は到来時、期限なしは請求時。不法行為は即時、善意利得は請求時、悪意利得は受領時。」この順で遅滞開始時期を整理。
ビジュアル描写
タイムラインをイメージ。債務発生→期限到来→履行請求→遅滞開始。不法行為は債務発生=遅滞開始。善意利得は請求が遅滞開始のトリガー。
重要公式
遅滞開始=期限の種類+債務の性質。不法行為・悪意利得は例外として即時責任。
関連連想
「不法行為は被害者保護で即時責任」「善意者は保護されて請求時責任」の対比で記憶。
比較表
確定期限→期限到来時|不確定期限→知った時|期限なし→請求時|不法行為→不法行為時|善意利得→請求時|悪意利得→受領時
05試験テクニック
出題頻度
履行遅滞関連は毎年何らかの形で出題。遅滞開始時期は2-3年に1回の頻度で直接問われる。
重要度
A:最重要。債務不履行の基本概念として、損害賠償や解除との関連でも必須知識。
出題パターン
- 遅滞責任開始時期の正誤判定
- 不法行為・不当利得との組み合わせ問題
- 同時履行抗弁権と遅滞責任の関係
解法・消去法
「履行請求時から」という表現に注目。不法行為と不確定期限は請求を待たないため、これらの選択肢は即座に×と判断できる。
時間戦略
条文知識があれば各選択肢30秒で判定可能。2分以内で解答すべき。412条群を正確に覚えていれば即答可能。
06実務応用
実務シナリオ
不動産売買で買主が代金支払を遅延した場合、いつから遅滞損害金が発生するか。確定期限ある契約なら期限到来時から。期限なき契約なら請求時から。実務では契約書で期限を明確化することが重要。
実務への影響
遅滞責任の開始時期は損害賠償請求権の発生や契約解除権の発生時期に関わる。実務では催告の証拠保全が重要となる。
ケーススタディ
賃料未払いの賃借人に対し、賃貸人が解除通知を送る場合。確定期限ある月払賃料なら、支払期日の翌日から遅滞。催告なしで解除可能か否かの判断に影響。
業界関連性
不動産取引では代金・賃料の支払遅延が頻発。遅滞責任開始時期の理解は、損害金計算や解除手続きに不可欠。
ニュース連動
賃料滞納と明渡し訴訟のニュースで、遅滞損害金の計算期間が問題となる事例が多い。
07よくある間違い
不法行為の損害賠償債務でも履行請求時から遅滞責任が始まると誤解する。
なぜ間違えるか:一般原則(期限なき債務)と例外規定(不法行為)を混同している。
正しい理解:不法行為・悪意利得は「即時責任」として例外扱いを明確に区別して記憶する。
不確定期限について「履行請求時から」と誤って覚える。
なぜ間違えるか:期限なし債務との区別が曖昧になっている。
正しい理解:「不確定期限=知った時」「期限なし=請求時」と対比して暗記する。
同時履行抗弁権がある場合でも遅滞責任を負うと判断する。
なぜ間違えるか:同時履行抗弁権の効果(遅滞責任の免除)を理解していない。
正しい理解:同時履行抗弁権=遅滞責任免除の効果としてセットで覚える。
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