平成2年(1990)本試験

4「無効」な行為と「取消し得る」行為の違い、および各制度に「善意の第三者保護規定」があるか否かを区別することが正解への鍵です。

行為能力・意思表示過去問

この問題の全体像

この問題は、意思表示の無効・取消しと、登記を備えた善意の第三者Cとの関係を問うものです。成年被後見人、未成年者、錯誤、虚偽表示の各ケースにおいて、Aが所有権を回復できるかを判定します。

平成2年4
A所有の土地が、AからB、Bから善意無過失のCへと売り渡され、移転登記もなされている。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
  • 1Aが成年被後見人の場合、Aは、契約の際完全な意思能力を有していてもAB間の契約を取り消し、Cに対して所有権を主張することができる。
  • 2Aが未成年者の場合、Aは、法定代理人の同意を得ずに契約をしていても成年に達すれば、AB間の契約を取り消すことができなくなる。
  • 3Aが要素の錯誤により契約をした場合、Aは、重大な過失がないときは、AB間の契約を取り消すことはできるが、Cに対して所有権を主張することはできない。
  • 4Aが差押えを免れるため、Bと通謀して登記名義をBに移した場合、Aは、AB間の契約の無効を主張することはできるが、Cに対して所有権を主張することはできない。

この問題の詳しい解説

POINT
この問題のポイント
「無効」な行為と「取消し得る」行為の違い、および各制度に「善意の第三者保護規定」があるか否かを区別することが正解への鍵です。
この問題は、6 つの視点でさらに深掘りできます
02
深度分析
この問題は、意思表示の無効・取消しと、登記を備えた善意の第三者Cとの関係を問うものです。成年被後見人、未成年者、錯誤、虚偽表示の各ケ…
03
知識背景
本問は、民法における「意思表示の瑕疵(かし)」と「登記を備えた第三者」の保護に関する核心的なテーマを扱っています。制限行為能力制度(…
04
覚え方
「虚偽(94条)は94条2項で保護、錯誤(95条)は無効で保護なし(旧法)。成年後見は取消し可能で第三者には強い。」
05
試験のコツ
A→B→Cの譲渡 chainにおける各当事者の主張可否 ・登記の有無と善意・悪意の組合せ ・無効と取消しの効果の違い(遡及効)
06
実務での見え方
不動産取引において、売主が精神疾患を持っていたり、売買契約に錯誤があったりした場合、後から所有権を主張された買主は、さらに転売先の第…
07
よくある間違い
{"mistake":"未成年者が成年に達すると、取消権が当然に消滅すると勘違いする。","why_wrong":"成年になっても、…
02深度分析
要約
この問題は、意思表示の無効・取消しと、登記を備えた善意の第三者Cとの関係を問うものです。成年被後見人、未成年者、錯誤、虚偽表示の各ケースにおいて、Aが所有権を回復できるかを判定します。
法的根拠
民法第9条(成年被後見人の行為)民法第5条(未成年者の法律行為)民法第95条(錯誤)民法第94条(虚偽表示)民法第94条第2項(虚偽表示と第三者)
論理の流れ
まず各選択肢におけるA-B間契約の効力(無効か取消可能か)を確定させます。次に、登記のある善意の第三者Cが法律によって保護されるか否かを検討します。成年被後見人と錯誤(旧法)は第三者保護規定がないためAが勝ちます。虚偽表示は94条2項によりCが保護されます。未成年者の成年達成による取消権消滅は誤りです。
重要な区別
「無効」な行為と「取消し得る」行為の違い、および各制度に「善意の第三者保護規定」があるか否かを区別することが正解への鍵です。
各選択肢のポイント
  • 成年被後見人の行為は取消可能で、第三者保護規定がないため、善意のCに対しても取消しと所有権主張ができる。
  • 未成年者が成年に達しても、法定代理人や本人が追認しない限り取消権は消滅せず、契約を取り消すことができる。
  • 錯誤は無効であり、旧法下では第三者保護規定がないため、善意のCに対しても所有権を主張できる(※正解は2)。
  • 虚偽表示は無効だが、民法94条2項により善意のCは保護されるため、AはCに対して所有権を主張できない。
03知識背景
テーマ概要
本問は、民法における「意思表示の瑕疵(かし)」と「登記を備えた第三者」の保護に関する核心的なテーマを扱っています。制限行為能力制度(成年被後見人・未成年者)と、心裡留保・通謀虚偽表示・錯誤といった意思表示の効力が、取引の安全のためにどう調整されるかを問います。
歴史的背景
1990年当時の民法(旧法)では、錯誤(95条)は「無効」とされており、善意の第三者を保護する明文規定が存在しませんでした。その後、民法改正(2017年成立、2020年施行)により錯誤は「取消し」に改められ、第三者保護規定が新設されましたが、本問は旧法の下での出題です。
関連法令
民法第4条(制限行為能力)民法第120条(取消権の消滅)民法第96条第3項(詐害取消しと第三者)不動産登記法
体系的位置づけ
宅建試験の民法分野において、「権利関係」の基礎中の基礎となる論点です。特に「対抗問題」と並び、第三者との関係を論じる頻出分野に位置づけられます。
前提知識
無効と取消しの違い(遡及効の有無など)、各種瑕疵ある意思表示の成立要件、および「善意の第三者」が保護されるための要件(登記の有無など)を理解している必要があります。
04記憶テクニック
語呂合わせ
「虚偽(94条)は94条2項で保護、錯誤(95条)は無効で保護なし(旧法)。成年後見は取消し可能で第三者には強い。」
ビジュアル描写
AからBへ所有権が移動し、さらにBからCへ移転した図をイメージします。AとBの間の契約に「×」がついても、Cが「登記」という盾を持っていれば、Cが勝つ場合(虚偽表示)と、Aが剣を持ってCを貫く場合(錯誤・成年後見)を分類します。
重要公式
錯誤=無効=第三者保護なし(旧法)。 虚偽表示=無効=第三者保護あり(94条2項)。
関連連想
「錯誤」は「さくご」と読み、自分の間違いなので他人(第三者)のせいにできないと連想する。
比較表
【無効】錯誤、虚偽表示(原則)→遡及効。 【取消し】未成年、成年後見、詐欺・強迫→取消権者の選択。 【第三者保護】虚偽表示(94条2項)あり、詐欺(96条3項)あり、錯誤(旧法)なし。
05試験テクニック
出題頻度
毎年出題、2-3年に1回
重要度
A:最重要。権利関係の根幹をなすため、確実に得点源にする必要がある。
出題パターン
  • A→B→Cの譲渡 chainにおける各当事者の主張可否
  • 登記の有無と善意・悪意の組合せ
  • 無効と取消しの効果の違い(遡及効)
解法・消去法
「善意の第三者」という言葉があれば、必ず対応する保護規定(94条2項など)があるか確認する。保護規定がない選択肢は、原則として所有権主張が可能と判断する。
時間戦略
「無効」か「取消し」か、そして「第三者保護規定」があるかを瞬時に判断する。該当しない肢は即座に切る。
06実務応用
実務シナリオ
不動産取引において、売主が精神疾患を持っていたり、売買契約に錯誤があったりした場合、後から所有権を主張された買主は、さらに転売先の第三者から追及を受けるリスクがあります。実務では、事前の意思能力確認や契約内容の慎重な審査が不可欠です。
実務への影響
登記を備えていても、前主との契約が無効(錯誤など)であれば、真の権利者から所有権を主張されるリスクがあります。これにより、不動産取引におけるリスク管理の重要性が強調されます。
ケーススタディ
成年被後見人が土地を売却し、転々流通したケースで、最終的な買主が登記を備えていても、被後見人が取消しを行い、所有権を回復した実際の裁判例があります(ただし、94条2項類似の法理による保護が論じられることもあります)。
業界関連性
不動産仲介業者にとって、売主の行為能力や契約の瑕疵の有無を確認することは、トラブル防止のために極めて重要です。
ニュース連動
高齢化社会に伴い、認知症などを理由とした契約の取消しや無効主張が増加しており、成年後見制度の利用と不動産取引の安全性が話題となっています。
07よくある間違い
未成年者が成年に達すると、取消権が当然に消滅すると勘違いする。
なぜ間違えるか:成年になっても、追認(確定的に有効にする意思表示)をしない限り、取消権は消滅しないルールを理解していないため。
「錯誤」の場合でも、善意の第三者Cは保護されると考えてしまう。
なぜ間違えるか:現在の民法(改正後)とは異なり、1990年当時の旧民法95条には第三者保護規定がなかったため。
成年被後見人の行為について、第三者保護の規定があると誤解する。
なぜ間違えるか:制限行為能力制度は本人保護が第一目的であり、成年被後見人の詐術など特別な事情がない限り、第三者は保護されない。
解説は、まだ続きます
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