平成15年(2003)本試験
問9
同時履行の抗弁権過去問
この問題の全体像
民法における同時履行の抗弁権の成立範囲について問う問題。特に、消費貸借(貸金)の返済債務と抵当権抹消登記手続が、同時履行の関係に立たないという判例の理屈を理解しているかが正否の鍵となる。
同時履行の関係に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 1動産売買契約における目的物引渡債務と代金支払債務とは、同時履行の関係に立つ。
- 2目的物の引渡しを要する請負契約における目的物引渡債務と報酬支払債務とは、同時履行の関係に立つ。
- 3貸金債務の弁済と当該債務の担保のために経由された抵当権設定登記の抹消登記手続とは、同時履行の関係に立つ。
- 4売買契約が詐欺を理由として有効に取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係に立つ。
この問題の詳しい解説
POINT
この問題のポイント
民法における同時履行の抗弁権の成立範囲について問う問題。
この問題は、6 つの視点でさらに深掘りできます
02
深度分析
民法における同時履行の抗弁権の成立範囲について問う問題。特に、消費貸借(貸金)の返済債務と抵当権抹消登記手続が、同時履行の関係に立た…
03
知識背景
同時履行の抗弁権とは、双務契約において、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる権利をいう。契約の…
04
覚え方
「貸して返すは別々に、抵当は後で消えるよ」。貸金返済と抵当権抹消は同時履行ではないことを覚える。
05
試験のコツ
売買契約の代金支払と引渡しの順序
・契約解除後の原状回復義務の同時履行
・請負契約の瑕疵修補と報酬支払の関係
・貸金返済と抵当権抹消…
06
実務での見え方
不動産売買の決済現場において、買主が代金を支払うのと同時に、売主が登記識別情報や鍵を引き渡す場面で、同時履行の抗弁権が実務上の根拠と…
07
よくある間違い
{"mistake":"貸金の返済と抵当権抹消は同時履行の関係にあると判断する。","why_wrong":"抵当権は担保であり、主…
02深度分析
要約
民法における同時履行の抗弁権の成立範囲について問う問題。特に、消費貸借(貸金)の返済債務と抵当権抹消登記手続が、同時履行の関係に立たないという判例の理屈を理解しているかが正否の鍵となる。
法的根拠
民法533条(同時履行の抗弁)民法121条(取消しの効果)民法369条(抵当権の内容)民法587条(消費貸借)
論理の流れ
まず、同時履行の抗弁権は双務契約における牽連性を前提とする。選択肢1の売買と2の請負(引渡しのあるもの)は典型的な双務契約であり同時履行が認められる。選択肢4の取消しに基づく原状回復も、各当事者の返還義務は対立関係にあるため同時履行が成立する。一方、選択肢3の貸金返済と抵当権抹消について、判例は抵当権が付従性を持つ担保権であることから、返済が先履行され、その後に抹消義務が生じるとし、同時履行を否定している。よって誤りは3である。
重要な区別
主たる債務の履行と、担保権の消滅という従たる義務の関係を区別すること。返済と抹消は同時ではなく、順次履行となる。
各選択肢のポイント
- 民法533条の適用があり、売主の引渡義務と買主の代金支払義務は同時履行の関係にあるため。
- 報酬支払債務は、目的物の引渡しと同時履行の関係に立つと解されているため。
- 貸金返済と抵当権抹消は、返済が先履行される関係にあり、同時履行の関係には立たないため。
- 取消しによる原状回復義務は、各当事者が相手方の給付と引換えに履行を拒めるため。
03知識背景
テーマ概要
同時履行の抗弁権とは、双務契約において、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる権利をいう。契約の公平を担保するための制度であり、売買、賃貸借、請負など様々な契約類型で問題となる。
歴史的背景
ローマ法の「エクセプチオ・ノン・アドインプレチ・コントラクトゥス」(不履行の抗弁)に由来する概念。日本の旧民法から引き継がれ、信義則に基づく公平な取引を確保するために民法533条に明文化された。
関連法令
民法533条民法534条(危険負担)民法569条(売主の担保責任)民法634条(請負の担保責任)
体系的位置づけ
民法「債権」各論の中の「契約」の総論部分に位置づけられ、双務契約の効力としての履行拒絶権の核心をなす。
前提知識
双務契約の意味(互いに対価的な債務を負う契約)、牽連性(履行の間に密接な結びつきがあること)、および担保権の付従性(主債務が消滅すると担保権も消滅する性質)の理解が必要。
04記憶テクニック
語呂合わせ
「貸して返すは別々に、抵当は後で消えるよ」。貸金返済と抵当権抹消は同時履行ではないことを覚える。
ビジュアル描写
天秤をイメージする。売買は両方のお皿に物を載せて同時に離す。貸金は、まず借金という重りを返してしまってから、天秤から抵当権という重りを外すイメージ。
重要公式
双務契約+履行の牽連性=同時履行の抗弁権(533条)
関連連想
「抵当」は「後(あと)」で消える。返済が「先(さき)」。返済してから抹消なので同時ではないと連想する。
比較表
【同時履行あり】売買(引渡し×代金)、請負(完成×報酬)、取消し(原状回復×原状回復)。【同時履行なし】貸金(返済→抵当抹消)、贈与(片務契約)。
05試験テクニック
出題頻度
2-3年に1回
重要度
A:最重要。契約解除や危険負担と並び、債権総論・各論の融合問題として頻出。
出題パターン
- 売買契約の代金支払と引渡しの順序
- 契約解除後の原状回復義務の同時履行
- 請負契約の瑕疵修補と報酬支払の関係
- 貸金返済と抵当権抹消の関係(頻出のひっかけ)
解法・消去法
選択肢に「抵当権抹消」や「貸金返済」があれば、まず同時履行の関係に立たない可能性を疑う。また、「原状回復」は基本的に同時履行になると覚えておけば消去法が使える。
時間戦略
判例の例外パターン(貸金返済など)を知っていれば即答可能。知らない場合でも、担保権の性質(付従性)から論理的に判断できるため、1分以内に解答したい。
06実務応用
実務シナリオ
不動産売買の決済現場において、買主が代金を支払うのと同時に、売主が登記識別情報や鍵を引き渡す場面で、同時履行の抗弁権が実務上の根拠となる。
実務への影響
相手方が代金を用意していない場合、物件を引き渡さなくても債務不履行にならないため、取引の安全と当事者間の公平が保たれる。
ケーススタディ
注文住宅の建築請負で、完成した引き渡し時に、施主が最終代金を支払わない場合、建築業者は家の引き渡しを拒否し、代金支払いを求めることができる。
業界関連性
不動産取引や建設工事の契約書において、決済方法や引渡し時期の条項を作成する際の基本的な考え方となる。
ニュース連動
住宅ローンの返済が終わった際の抵当権抹消手続きにおいて、金融機関が手続きを遅延させるトラブルなどで、この原則が背景にある。
07よくある間違い
貸金の返済と抵当権抹消は同時履行の関係にあると判断する。
なぜ間違えるか:抵当権は担保であり、主債務の履行後に消滅する付従性があることを理解していないため。
正しい理解:「返済してから抹消」という順序を意識し、担保権は「後からついてくる(消える)」ものと覚える。
契約が取り消された場合の原状回復義務は、同時履行の関係に立たないと考える。
なぜ間違えるか:取消しによって契約が初めからなかったことになるため、返還義務の対立関係を見落とすため。
正しい理解:取消し=なかったこと(=元に戻す)=お互いに返す、というイメージで「同時履行」と結びつける。
双務契約であれば常に同時履行の抗弁権が認められると考える。
なぜ間違えるか:履行の牽連性がない場合や、特約で順序を決めた場合、または先履行義務がある場合には認められないことがあるため。
正しい理解:「相手がやってくれるまで、私はやらない」という公平性が成り立つかどうかをケースごとに考える。
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