令和5年(2023)本試験
問5
不在者過去問
この問題の全体像
不在者の財産管理に関する民法の規定と判例を問う問題。家庭裁判所による管理人選任の要件、管理人の権限(保存行為と管理を超える行為の区別)、訴訟行為における許可の要否が論点。民法26条から31条の理解が必要。
従来の住所又は居所を去った者(以下この問において「不在者」という。)の財産の管理に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、この問において「管理人」とは、不在者の財産の管理人をいうものとする。
- 1不在者が管理人を置かなかったときは、当該不在者の生死が7年間明らかでない場合に限り、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。
- 2不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官から請求があったとしても管理人を改任することはできない。
- 3家庭裁判所により選任された管理人は、不在者を被告とする建物収去土地明渡請求を認容した第一審判決に対して控訴を提起するには、家庭裁判所の許可が必要である。
- 4家庭裁判所により選任された管理人は、保存行為として不在者の自宅を修理することができるほか、家庭裁判所の許可を得てこれを売却することができる。
この問題の詳しい解説
POINT
この問題のポイント
不在者の財産管理に関する民法の規定と判例を問う問題。
この問題は、5 つの視点でさらに深掘りできます
02
深度分析
不在者の財産管理に関する民法の規定と判例を問う問題。家庭裁判所による管理人選任の要件、管理人の権限(保存行為と管理を超える行為の区別…
03
知識背景
不在者財産管理制度は、従来の住所や居所を去った者の財産を保護するための制度。不在者が管理人を置かなかった場合、家庭裁判所が利害関係人…
04
覚え方
「保存は自由、売却は許可」で管理人の権限を覚える。「7年は失踪、不在は即座」で失踪宣告と不在者管理を区別。「控訴は許可不要」を判例セ…
05
試験のコツ
管理人の権限の範囲を問う問題
・家庭裁判所の関与のタイミングを問う問題
・失踪宣告との違いを問う問題
06
実務での見え方
不動産業界では、所有者が長期不在の物件を扱う場合に不在者財産管理制度を利用。例えば、海外移住した所有者の不動産を管理・売却する際、家…
02深度分析
要約
不在者の財産管理に関する民法の規定と判例を問う問題。家庭裁判所による管理人選任の要件、管理人の権限(保存行為と管理を超える行為の区別)、訴訟行為における許可の要否が論点。民法26条から31条の理解が必要。
法的根拠
民法第26条(不在者の財産の管理)民法第27条(管理人の職務)民法第28条(管理人の権限)民法第103条(保存行為等)
論理の流れ
まず民法26条1項で管理人選任の要件を確認。生死不明7年は不要で誤りと判断。次に26条2項で管理人改任の可否を確認。生死不明時でも改任可能で誤り。判例(最判昭44.7.8)により管理人の控訴提起に許可不要と判断。最後に28条で管理人の権限を確認。保存行為は自由、売却等は許可が必要で正しいと判断。
重要な区別
管理人の権限において「保存行為」と「管理を超える行為」の区別が最重要。保存行為は単独で可能、管理を超える行為は家庭裁判所の許可が必要。
各選択肢のポイント
- 民法26条1項は生死不明7年を要件とせず、管理人を置かなければ直ちに家庭裁判所は処分を命じることができる。
- 民法26条2項により、不在者が管理人を置いた場合でも、家庭裁判所は管理人を改任することができる。
- 判例(最判昭44.7.8)により、管理人は家庭裁判所の許可なく控訴を提起できる。訴訟行為に許可は不要。
- 民法28条により、管理人は保存行為として修理が可能。売却は管理を超える行為なので家庭裁判所の許可が必要。
03知識背景
テーマ概要
不在者財産管理制度は、従来の住所や居所を去った者の財産を保護するための制度。不在者が管理人を置かなかった場合、家庭裁判所が利害関係人等の請求により管理人を選任。管理人は保存行為を単独で行い、管理を超える行為には裁判所の許可が必要。
歴史的背景
不在者財産管理は明治民法から存在する制度。失踪宣告(民法30条)とは別制度。失踪宣告は7年または危難失踪の場合に死亡とみなすが、不在者財産管理は生死不明でなくても利用可能。2018年改正で相続法改正があったが、本制度は大きな変更なし。
関連法令
民法第26条(不在者の財産の管理)民法第27条(管理人の職務)民法第28条(管理人の権限)民法第30条(失踪の宣告)民法第103条(保存行為等)
体系的位置づけ
民法総則編の「人」の章に位置づく。権利能力、意思能力と並ぶ人に関する重要制度。宅建試験では条文知識と判例知識を問う標準的な難易度の問題。
前提知識
民法103条の保存行為・管理行為・処分行為の区別が前提知識。保存行為は財産の現状維持、管理行為は財産の利用・改良、処分行為は権利変動を伴う行為。不在者財産管理人と後見人の権限の違いも理解が必要。
04記憶テクニック
語呂合わせ
「保存は自由、売却は許可」で管理人の権限を覚える。「7年は失踪、不在は即座」で失踪宣告と不在者管理を区別。「控訴は許可不要」を判例セットで暗記。
ビジュアル描写
不在者→(管理人なし)→家庭裁判所が選任→管理人→保存行為(○)/売却等(許可必要)。訴訟行為はすべて○のイメージ。
重要公式
管理人の権限=保存行為(単独可)+管理行為以上(許可要)。訴訟行為=許可不要。生死7年=失踪宣告の要件。
関連連想
「家主が長期旅行」をイメージ。家の修理は勝手にできるが、家を売るには大家の許可がいる感覚。
比較表
不在者財産管理人:保存行為は自由、管理行為以上は許可必要/後見人:保存・管理行為は自由、処分行為は許可必要/失踪宣告:死亡とみなされ相続開始
05試験テクニック
出題頻度
不在者財産管理は3-4年に1回程度の出題頻度。民法総則の中では標準的な頻度。
重要度
B:重要。条文の正確な理解と判例知識が必要。他の管理制度(後見、保佐、補助)との比較で出題される可能性が高い。
出題パターン
- 管理人の権限の範囲を問う問題
- 家庭裁判所の関与のタイミングを問う問題
- 失踪宣告との違いを問う問題
解法・消去法
「7年」という数字が出たら失踪宣告と混同していないか確認。「許可が必要」という表現は保存行為か管理行為以上かで判断。訴訟行為は原則として許可不要と覚える。
時間戦略
条文知識問題は1問1分以内で解答。選択肢1と2は条文確認、選択肢3は判例知識、選択肢4は条文知識で判断。迷ったら28条を確認。
06実務応用
実務シナリオ
不動産業界では、所有者が長期不在の物件を扱う場合に不在者財産管理制度を利用。例えば、海外移住した所有者の不動産を管理・売却する際、家庭裁判所に管理人選任を申し立て、許可を得て売却手続きを進める。
実務への影響
不在者の財産を適切に管理・保護することで、利害関係人の権利を守る。放置された不動産の価値低下を防ぎ、近隣住民への悪影響も回避できる。
ケーススタディ
所有者が行方不明になった空き家のケース。隣家の住人が倒壊危険を訴え、市が家庭裁判所に管理人選任を請求。管理人が選任され、保存行為として応急措置を行い、その後許可を得て解体・売却を実施した事例がある。
業界関連性
不動産取引において、売主の所在不明案件で本制度を活用。相続登記未了物件や空き家問題の解決にも寄与する重要な制度。
ニュース連動
空き家問題の深刻化に伴い、不在者財産管理制度の活用が注目。相続登記義務化(2024年施行)とも関連し、所有者不明土地の解決手段として議論されている。
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