平成10年(1998)本試験

10相続の放棄の取消しは、詐欺等があっても家庭裁判所に申し立てる必要があり、他の相続人への意思表示では効力を生じない点。

相続の承認・放棄過去問

この問題の全体像

相続の承認・放棄における熟慮期間の起算点、共同相続人の行為の影響、および放棄の取消しに関する知識を問う問題。特に放棄の取消しの相手方と要件が論点。

平成10年10
相続人が、被相続人の妻Aと子Bのみである場合(被相続人の遺言はないものとする。)の相続の承認又は放棄に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  • 1相続の承認又は放棄をすべき3ヵ月の期間の始期は、AとBとで異なることがある。
  • 2Aが単純承認をすると、Bは、限定承認をすることができない。
  • 3A及びBは限定承認をしたが、Bが相続財産を隠匿していたとき、相続債権者は、相続財産をもって弁済を受けられなかった債権額の1/2について、Bに請求できる。
  • 4Aは、Bの詐欺によって相続の放棄をしたとき、Bに対して取消しの意思表示をして、遺産の分割を請求することができる。

この問題の詳しい解説

POINT
この問題のポイント
相続の放棄の取消しは、詐欺等があっても家庭裁判所に申し立てる必要があり、他の相続人への意思表示では効力を生じない点。
この問題は、6 つの視点でさらに深掘りできます
02
深度分析
相続の承認・放棄における熟慮期間の起算点、共同相続人の行為の影響、および放棄の取消しに関する知識を問う問題。特に放棄の取消しの相手方…
03
知識背景
相続の承認と放棄は、相続人が相続効果を確定的に受け入れるか拒否するかを決定する単独行為である。無限責任を負う単純承認、相続財産の範囲…
04
覚え方
放棄の取消しは「家庭」裁判所へ。相続人への言い訳は無効。
05
試験のコツ
熟慮期間の起算点のずれ ・限定承認の共同性 ・法定単純承認事由(隠匿等) ・放棄の取消しの相手方
06
実務での見え方
借金まみれの親が亡くなった際、兄弟の一人が財産を隠していた場合、隠した兄弟は借金を背負い、他の兄弟は限定承認でリスクを回避できるとい…
07
よくある間違い
{"mistake":"放棄の取消しを他の相続人に対して意思表示すれば有効だと考える。","why_wrong":"民法919条の規…
02深度分析
要約
相続の承認・放棄における熟慮期間の起算点、共同相続人の行為の影響、および放棄の取消しに関する知識を問う問題。特に放棄の取消しの相手方と要件が論点。
法的根拠
民法915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)民法921条(法定単純承認)民法923条(限定承認)民法919条(相続の放棄の取消し)
論理の流れ
選択肢1は熟慮期間が「相続開始を知った時」から進行するため各相続人で異なる可能性があり正しい。選択肢2は限定承認は相続人全員で行う必要があり、一人が単純承認すると共同手続きが不可能になるため正しい。選択肢3は財産隠匿により法定単純承認とみなされ、債権者はその者に請求できるため正しい。選択肢4は放棄の取消しは家庭裁判所に対してするものであり、相続人に対してするものではないため誤り。
重要な区別
相続の放棄の取消しは、詐欺等があっても家庭裁判所に申し立てる必要があり、他の相続人への意思表示では効力を生じない点。
各選択肢のポイント
  • 熟慮期間は各自が相続開始を知った時から進行するため、知った時期が異なれば起算点も異なるから。
  • 限定承認は相続人全員が共同でしなければならず、一人が単純承認すると共同手続きが不可能になるから。
  • 財産隠匿をした相続人は単純承認したものとみなされ、債権者はその者に対して不足分を請求できるから。
  • 放棄の取消しは家庭裁判所に対してする必要があり、他の相続人に対して意思表示しても効力はないから。
03知識背景
テーマ概要
相続の承認と放棄は、相続人が相続効果を確定的に受け入れるか拒否するかを決定する単独行為である。無限責任を負う単純承認、相続財産の範囲内で責任を負う限定承認、一切の権利義務を失う放棄があり、それぞれ厳格な要件と期間が定められている。
歴史的背景
旧民法では家制度の影響が強かったが、現行民法は個人の意思尊重の観点から、相続開始を知った時から3ヶ月の熟慮期間を設け、相続人が財産状況を確認した上で選択できる制度を整備した。
関連法令
民法915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)民法919条(相続の放棄の取消し)民法921条(法定単純承認)民法923条(限定承認)
体系的位置づけ
民法(相続法)における「相続の効力」の核心部分であり、不動産の名義変更や債務整理の前提となる重要な手続知識。
前提知識
相続人の範囲と順位、相続財産の構成(積極財産と消極財産)、単純承認・限定承認・放棄の定義と効果、熟慮期間の概念を理解している必要がある。
04記憶テクニック
語呂合わせ
放棄の取消しは「家庭」裁判所へ。相続人への言い訳は無効。
ビジュアル描写
相続人が裁判所(箱)に向かって「放棄」の書類を出すイメージ。取消しも同じ裁判所に向かって行う。他の相続人は横にいるだけ。
重要公式
熟慮期間=3ヶ月、限定承認=全員共同、放棄取消=家庭裁判所へ。
関連連想
詐欺にあったからといって、加害者である相続人に直接「取消し!」と叫んでも無効。公的な機関(裁判所)を通すイメージ。
比較表
単純承認:無限責任、手続不要。限定承認:有限責任、全員共同・3ヶ月以内。放棄:資格喪失、3ヶ月以内・家庭裁判所。
05試験テクニック
出題頻度
2-3年に1回程度出題される重要論点。
重要度
A:最重要。相続手続の実務的基礎となるため。
出題パターン
  • 熟慮期間の起算点のずれ
  • 限定承認の共同性
  • 法定単純承認事由(隠匿等)
  • 放棄の取消しの相手方
解法・消去法
「家庭裁判所」への手続を欠いている選択肢や、「全員」でないとできない限定承認に関する記述の誤りを探す。
時間戦略
条文の知識問題なので、迷わず判断できれば即答。詰まったら「家庭裁判所への申請」が要件かどうかを確認する。
06実務応用
実務シナリオ
借金まみれの親が亡くなった際、兄弟の一人が財産を隠していた場合、隠した兄弟は借金を背負い、他の兄弟は限定承認でリスクを回避できるという実務的な紛争解決の知識となる。
実務への影響
不動産売買において、売主の相続手続が完了していない場合、承認・放棄の状態を確認しないと契約当事者としての資格を確認できない。
ケーススタディ
父親の死亡後、長男が父の預金を勝手に使い込んだケース。長男は法定単純承認となり、父の借金を全額負担することになり、次男は相続放棄をして借金を免れた事例。
業界関連性
不動産登記名義人の相続人調査において、誰が相続人であるかだけでなく、誰が承認・放棄したかを特定する上で不可欠。
ニュース連動
高齢化社会に伴う孤独死や負債の相続問題において、相続放棄の手続誤りがニュースになることがある。
07よくある間違い
放棄の取消しを他の相続人に対して意思表示すれば有効だと考える。
なぜ間違えるか:民法919条の規定を知らない、または詐欺取消の一般原則(相手方への意思表示)をそのまま当てはめてしまうため。
限定承認は相続人ごとにできると考える。
なぜ間違えるか:単純承認や放棄は個別にできるが、限定承認の特殊性(共同性)を理解していない。
熟慮期間は相続開始時に一律にスタートすると考える。
なぜ間違えるか:民法915条の「自己のために相続の開始があったことを知った時」の意味を正確に読み取れていない。
解説は、まだ続きます
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