平成10年(1998)本試験

2取得時効による所有権取得が「原始取得」である点を理解し、登記の対抗問題(民法177条)が適用されないことを区別する。

取得時効過去問

この問題の全体像

この問題は、所有権の取得時効に関する成立要件、占有の承継、賃貸借による占有、第三者との関係(対抗要件)、および農地法の適用の有無について、多角的に理解しているかを問う問題です。

平成10年2
所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有しているBの取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  • 1Bの父が15年間所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を占有し、Bが相続によりその占有を承継した場合でも、B自身がその後5年間占有しただけでは、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができない。
  • 2Bが2年間自己占有し、引き続き18年間Cに賃貸していた場合には、Bに所有の意思があっても、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができない。
  • 3DがBの取得時効完成前にAから甲土地を買い受けた場合には、Dの登記がBの取得時効完成の前であると後であるとを問わず、Bは、登記がなくても、時効による甲土地の所有権の取得をDに対抗することができる。
  • 4取得時効による所有権の取得は、原始取得であるが、甲土地が農地である場合には、Bは、農地法に基づく許可を受けたときに限り、時効によって甲土地の所有権を取得することができる。

この問題の詳しい解説

POINT
この問題のポイント
取得時効による所有権取得が「原始取得」である点を理解し、登記の対抗問題(民法177条)が適用されないことを区別する。
この問題は、6 つの視点でさらに深掘りできます
02
深度分析
この問題は、所有権の取得時効に関する成立要件、占有の承継、賃貸借による占有、第三者との関係(対抗要件)、および農地法の適用の有無につ…
03
知識背景
取得時効とは、他人の物を所有の意思をもって、平穏かつ公然に一定期間占有し続けることで、その物の所有権を取得する制度です。所有権以外の…
04
覚え方
時効は原始、登記不要、農地許可もナシ。20年で所有権ゲット。
05
試験のコツ
占有の承継(相続や譲渡) ・賃借人等による代理占有 ・第三者との対抗関係(登記の要否) ・農地法や都市計画法等の行政法規との関係
06
実務での見え方
境界線が曖昧な隣地を長年庭として使用していた場合、時効によりその土地の所有権を主張できるかどうかの紛争解決に適用される。
07
よくある間違い
{"mistake":"時効完成前に第三者が登記をしたら、時効完成後もその第三者に対抗できないと考える。","why_wrong":…
02深度分析
要約
この問題は、所有権の取得時効に関する成立要件、占有の承継、賃貸借による占有、第三者との関係(対抗要件)、および農地法の適用の有無について、多角的に理解しているかを問う問題です。
法的根拠
民法162条(所有権の取得時効)民法163条(所有の意思のある占有による取得時効)民法177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)民法187条(占有の承継)農地法3条
論理の流れ
選択肢1は、相続による占有の承継(民法187条)が認められるため、期間の通算が可能であり誤りです。選択肢2は、賃借人等の占有も所有の意思をもつ占有者(賃貸人)の占有として時効期間に算入できる(民法163条)ため誤りです。選択肢3は、取得時効が原始取得であり、時効完成時に所有権を取得するため、時効完成前の第三者の登記の有無にかかわらず、登記なくして対抗できるため正しいです。選択肢4は、時効取得は原始取得であり、農地法の許可を要する権利移転には該当しないため誤りです。
重要な区別
取得時効による所有権取得が「原始取得」である点を理解し、登記の対抗問題(民法177条)が適用されないことを区別する。
各選択肢のポイント
  • 民法187条により、相続により前の占有者の占有を承継し、期間を通算することができるため、取得可能である。
  • 民法163条により、賃借人等の占有も所有の意思をもつ占有者(賃貸人)の占有として時効期間に算入できる。
  • 取得時効は原始取得であり、時効完成時に所有権を取得するため、時効完成前の第三者の登記の有無にかかわらず対抗できる。
  • 取得時効は原始取得であり、農地法3条の許可を要する「権利移動」には該当しないため、許可は不要である。
03知識背景
テーマ概要
取得時効とは、他人の物を所有の意思をもって、平穏かつ公然に一定期間占有し続けることで、その物の所有権を取得する制度です。所有権以外の財産権も対象となります。20年の占有が必要ですが、善意かつ無過失であれば10年で取得できます。
歴史的背景
時効制度の起源はローマ法にあり、長期間事実状態が継続した場合に、その状態を尊重して法律関係を安定させる社会秩序維持の目的があります。日本の民法もこの理念を採用しています。
関連法令
民法162条民法163条民法164条民法165条不動産登記法
体系的位置づけ
民法「物権」分野の「所有権」における重要な取得原因の一つであり、宅建試験の民法分野において頻出の核心論点です。
前提知識
「所有の意思」「平穏」「公然」といった占有の態様、および「原始取得」と「承継取得」の違い、登記の対抗力に関する基本的な理解が必要です。
04記憶テクニック
語呂合わせ
時効は原始、登記不要、農地許可もナシ。20年で所有権ゲット。
ビジュアル描写
時効完成の瞬間に、真上から新しい所有権のタイトルが降ってきて、それ以前の登記関係をすべて吹き飛ばすイメージ。
重要公式
20年(or 10年)+所有の意思+平穏・公然=所有権取得
関連連想
時効=「時が経てば権利になる」という言葉通り、時間そのものが権利の源なので、前の主人の登記など関係ないと連想する。
比較表
原始取得(時効・即時取得):登記なくして第三者に対抗可。承継取得(売買・贈与):登記なければ第三者に対抗不可。
05試験テクニック
出題頻度
毎年出題
重要度
A:最重要、民法の得点源であり、他の論点と組み合わせて出題される頻度が極めて高い。
出題パターン
  • 占有の承継(相続や譲渡)
  • 賃借人等による代理占有
  • 第三者との対抗関係(登記の要否)
  • 農地法や都市計画法等の行政法規との関係
解法・消去法
「許可が必要」という選択肢は時効取得においては原則として誤り(原始取得だから)。「登記が必要」という選択肢も第三者対抗関係では誤りになりやすい。
時間戦略
原始取得か承継取得かの判断が鍵なので、そこが即座にわかれば即答可能。計算問題ではないので知識確認に集中する。
06実務応用
実務シナリオ
境界線が曖昧な隣地を長年庭として使用していた場合、時効によりその土地の所有権を主張できるかどうかの紛争解決に適用される。
実務への影響
長期間の事実状態を尊重することで、古い権利関係に基づく不測の損害を防ぎ、土地の利用権を安定させる効果がある。
ケーススタディ
他人の土地をフェンスで囲って20年以上耕作していた農家が、登記名義人に対して所有権の確認を求めた裁判で、時効取得が認められた事例。
業界関連性
不動産取引において、登記簿上の所有者と実際の占有者が異なる場合の権利調査(権利状況の確認)に不可欠な知識。
ニュース連動
所有者不明土地問題の解決において、時効取得の主張が土地の利用権確定の一つの手段として注目されている。
07よくある間違い
時効完成前に第三者が登記をしたら、時効完成後もその第三者に対抗できないと考える。
なぜ間違えるか:時効取得を「承継取得」と混同し、民法177条の登記主義を適用してしまうため。
他人に賃貸している期間は、自分が占有していないため時効期間に算入できないと考える。
なぜ間違えるか:「占有」と「所持」を区別できておらず、代理占有の概念を理解していないため。
農地を時効取得する場合、農地法の許可が必要だと考える。
なぜ間違えるか:時効取得を権利の移動(譲渡)と誤解しているため。
解説は、まだ続きます
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