平成元年(1989)本試験

2「訴えの取下げ」は時効中断の効力を遡って消滅させる(なかったことにする)点と、「確定判決」は新たに10年の時効を起算する点の区別。

消滅時効過去問

この問題の全体像

訴訟提起による時効中断、判決確定後の時効期間、訴え取下げの効果、および時効消滅債権を自働債権とする相殺の可否に関する知識を問う問題です。

平成元年2
Aは、Bに対し金銭債権を有しているが、支払期日を過ぎてもBが支払いをしないので、消滅時効が完成する前に、Bに対して、支払いを求める訴えを提起した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
  • 1AのBに対する勝訴判決が確定した場合、時効は新たに進行を開始し、その時効期間は10年となる。
  • 2訴えの提起前6月以内に、AがBに債務の履行の催告をしても、時効が更新されるのは、訴えを提起したときである。
  • 3Aが訴えを取り下げた場合、Aの金銭債権は、Aがその取下げをした日から5年間権利を行使しないとき、消滅する。
  • 4BがAに対する債権を有する場合において、その債権が既に時効により消滅しているときは、その時効完成前にAの金銭債権と相殺し得る状態にあったとしても、Bは、相殺することはできない。

この問題の詳しい解説

POINT
この問題のポイント
「訴えの取下げ」は時効中断の効力を遡って消滅させる(なかったことにする)点と、「確定判決」は新たに10年の時効を起算する点の区別。
この問題は、6 つの視点でさらに深掘りできます
02
深度分析
訴訟提起による時効中断、判決確定後の時効期間、訴え取下げの効果、および時効消滅債権を自働債権とする相殺の可否に関する知識を問う問題で…
03
知識背景
時効の中断(更新)事由である「裁判上の請求」の効果と、その手続きが不成立になった場合(取下げ等)の取扱い、および時効完成した債権を用…
04
覚え方
判決確定で10年リセット、取下げでなかったことに。相殺は相手が生きていればOK。
05
試験のコツ
訴えの取下げと時効中断の効力の関係 ・時効完成した債権を自働債権とする相殺の可否 ・催告と裁判上の請求の関係
06
実務での見え方
売掛金回収のために訴訟を提起したが、相手が支払能力を持たないことが判明し、訴えを取り下げた場合、元の時効期間がどの程度残っているかを…
07
よくある間違い
{"mistake":"訴えを取り下げると、そこから新たに時効が進行すると勘違いする。","why_wrong":"手続きをした事実…
02深度分析
要約
訴訟提起による時効中断、判決確定後の時効期間、訴え取下げの効果、および時効消滅債権を自働債権とする相殺の可否に関する知識を問う問題です。
法的根拠
民法147条(裁判上の請求による時効の中断)民法149条(訴えの取下げ等)民法169条(確定判決等による時効の更新)民法508条(時効にかかった債権を自働債権とする相殺の禁止)
論理の流れ
選択肢1は、確定判決により時効が更新(中断)され、新たな時効期間が10年となる点で正しい(民法169条)。選択肢2は、催告による時効中断は訴え提起により遡って有効となるが、中断時点は催告時であるため誤り。選択肢3は、訴えの取下げにより時効中断の効力がなくなり、元の時効期間が継続するため誤り。選択肢4は、相殺適状時に相手債権が時効消滅していなければ、自働債権が時効消滅していても相殺できるため誤り。
重要な区別
「訴えの取下げ」は時効中断の効力を遡って消滅させる(なかったことにする)点と、「確定判決」は新たに10年の時効を起算する点の区別。
各選択肢のポイント
  • 確定判決により時効が更新され、新たな時効期間は10年となるため正しい。
  • 催告による時効中断は、6ヶ月以内に訴え提起等をすることで確定するが、中断時点は催告時である。
  • 訴えを取り下げた場合、時効中断の効力はなくなり、中断前の期間が継続する。新たに5年にはならない。
  • 相殺適状時に相手方の債権が時効消滅していなければ、自働債権が時効消滅していても相殺できる。
03知識背景
テーマ概要
時効の中断(更新)事由である「裁判上の請求」の効果と、その手続きが不成立になった場合(取下げ等)の取扱い、および時効完成した債権を用いた相殺の特則に関する一連のルール。
歴史的背景
本問は1989年出題であり、当時は「中断」という用語が使われていたが、現行法(2017年改正)では「更新」という用語に変更されている。ただし、判決確定後の10年時効というルールは現在も維持されている。
関連法令
民法147条民法149条民法150条民法152条民法169条
体系的位置づけ
民法「総則」の「時効」分野における核心部分であり、権利の実行手続きと密接に関連するため、実務的にも重要な位置づけ。
前提知識
時効の利益を放棄できないこと、時効の完成猶予と更新の違い、相殺の要件(反対債権が相殺適状にあること)の基礎理解が必要。
04記憶テクニック
語呂合わせ
判決確定で10年リセット、取下げでなかったことに。相殺は相手が生きていればOK。
ビジュアル描写
時効の砂時計をイメージ。裁判を起こすと砂時計が止まる。勝訴判決で砂時計がリセットされて10年分の砂が入る。取下げは止めた砂を元に戻す。
重要公式
確定判決 = 新時効10年\n取下げ = 遡及的無効\n相殺 = 相手債権が時効にかかってなければOK
関連連想
「10年」という数字は、判決の権威を示す長さとして記憶。「取下げ」は「なかったこと」なので、中断の効果も消えると連想。
比較表
【取下げ】効力なし(元に戻る) vs 【却下】効力あり(進行する)\n【催告】6ヶ月以内に裁判が必要 vs 【裁判上の請求】即効性あり
05試験テクニック
出題頻度
2-3年に1回
重要度
A:最重要。時効と相殺の組合せは頻出。
出題パターン
  • 訴えの取下げと時効中断の効力の関係
  • 時効完成した債権を自働債権とする相殺の可否
  • 催告と裁判上の請求の関係
解法・消去法
「取下げた日から」という日付起算の選択肢は通常誤り(元に戻るだけなので)。相殺で「できない」とする選択肢は、条文を知らないと引っかかりやすいが、原則はできると考える。
時間戦略
判決確定後の期間(10年)と取下げの効果(効力なし)は即答できるようにし、相殺の要件で少し時間をかける。
06実務応用
実務シナリオ
売掛金回収のために訴訟を提起したが、相手が支払能力を持たないことが判明し、訴えを取り下げた場合、元の時効期間がどの程度残っているかを確認する際に必要。
実務への影響
訴訟戦略において、時効完成間際に訴えを提起する場合、取下げのリスク(時効完成)を正確に把握する必要がある。
ケーススタディ
A社の債権が時効間際で訴訟提起。その後B社から反対債権での相殺を主張されたが、B社の債権はすでに時効消滅していたため、相殺は認められなかった事例。
業界関連性
不動産賃貸管理における滞納家賃回収や、売買代金の未回収リスク管理に不可欠。
ニュース連動
債権回収を巡る訴訟において、時効中断の主張が認められるか否かが争点となる企業間訴訟で頻繁に適用される。
07よくある間違い
訴えを取り下げると、そこから新たに時効が進行すると勘違いする。
なぜ間違えるか:手続きをした事実に目を奪われ、取下げの「遡及効(なかったこと)」を理解していないため。
自分の債権が時効消滅していると、相殺を主張できないと考える。
なぜ間違えるか:相殺は双方の債務を消滅させる行為であり、自働債権(自分の債権)が消滅していても、相手債権が有効であれば可能と知らないため。
判決確定後の時効期間を5年と答える。
なぜ間違えるか:一般の債権の時効期間(改正法では5年)と混同しているため。
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