平成10年(1998)本試験

8「履行の拒絶(同時履行の抗弁)」と「解除の要件」の区別。解除するためには「提供」が必要だが、単に履行を拒否するだけなら提供は不要。

契約の解除過去問

この問題の全体像

売買契約の解除における「同時履行の抗弁権」と「履行遅滞による解除」の関係、解除後の原状回復義務、および解除権留保の消滅時効に関する理解を問う問題。

平成10年8
Aが、Bに建物を3,000万円で売却した場合の契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  • 1Aが定められた履行期に引渡しをしない場合、Bは、3,000万円の提供をしないで、Aに対して履行の催告をしたうえ契約を解除できる。
  • 2Bが建物の引渡しを受けて入居したが、2ヵ月経過後契約が解除された場合、Bは、Aに建物の返還とともに、2ヵ月分の使用料相当額を支払う必要がある。
  • 3Bが代金を支払った後Aが引渡しをしないうちに、Aの過失で建物が焼失した場合、Bは、Aに対し契約を解除して、代金の返還、その利息の支払い、引渡し不能による損害賠償の各請求をすることができる。
  • 4特約でBに留保された解除権の行使に期間の定めのない場合、Aが、Bに対し相当の期間内に解除するかどうか確答すべき旨を催告し、その期間内に解除の通知を受けなかったとき、Bは、契約を解除できなくなる。

この問題の詳しい解説

POINT
この問題のポイント
「履行の拒絶(同時履行の抗弁)」と「解除の要件」の区別。解除するためには「提供」が必要だが、単に履行を拒否するだけなら提供は不要。
この問題は、6 つの視点でさらに深掘りできます
02
深度分析
売買契約の解除における「同時履行の抗弁権」と「履行遅滞による解除」の関係、解除後の原状回復義務、および解除権留保の消滅時効に関する理…
03
知識背景
契約の解除は、当事者の一方的な意思表示によって契約を遡及的に消滅させる制度です。特に履行遅滞による解除では、債権者側にも「提供」など…
04
覚え方
解除したいなら提供(ていきょう)して、催告(さいこく)して。
05
試験のコツ
提供なしで解除できるか ・使用料を請求できるか ・危険負担との絡み
06
実務での見え方
売主が引き渡し期日を過ぎても物件を渡さないため、買主が契約を解除したいと考える場面。
07
よくある間違い
{"mistake":"同時履行の抗弁権があれば、自分の債務の提供なしに解除できると考える。","why_wrong":"抗弁権は履…
02深度分析
要約
売買契約の解除における「同時履行の抗弁権」と「履行遅滞による解除」の関係、解除後の原状回復義務、および解除権留保の消滅時効に関する理解を問う問題。
法的根拠
民法533条(同時履行の抗弁)民法541条(履行遅滞による解除)民法545条(解除の効果)民法703条・704条(不当利得)民法556条(解除権留保)
論理の流れ
選択肢1は、債権者が債務者の履行遅滞を理由に解除するには、原則として自己の債務の提供が必要であるという判例(最判昭39.11.24)に反するため誤り。他の選択肢は、使用料の支払義務や債務不履行による損害賠償、解除権留保の消滅に関する正しい記述である。
重要な区別
「履行の拒絶(同時履行の抗弁)」と「解除の要件」の区別。解除するためには「提供」が必要だが、単に履行を拒否するだけなら提供は不要。
各選択肢のポイント
  • 解除には自己の債務の提供が必要であり、提供なしに解除できるとした点で誤り。
  • 解除後は原状回復義務として、物件の使用利益相当額を返還すべきため正しい。
  • 売主の帰責事由による履行不能なので、解除と損害賠償請求ができるため正しい。
  • 期間の定めがない解除権留保は、催告で確答を求めれば権利が消滅するため正しい。
03知識背景
テーマ概要
契約の解除は、当事者の一方的な意思表示によって契約を遡及的に消滅させる制度です。特に履行遅滞による解除では、債権者側にも「提供」などの協力義務が求められる点が重要です。
歴史的背景
民法制定以来、契約拘束力と取引安全のバランスを保つため、解除の要件は厳格に解釈されてきました。判例は、債権者の側も誠実に履行の準備をしていることを要求しています。
関連法令
民法415条(債務不履行)民法541条〜548条(解除)民法556条(解除権留保)民法703条(不当利得)
体系的位置づけ
民法「債権総論」の核心部分であり、不動産取引におけるトラブル解決の基礎となるため、宅建試験では必須の論点です。
前提知識
双務契約の性質、危険負担の原則(債権者主義)、不当利得の返還範囲、催告の必要性。
04記憶テクニック
語呂合わせ
解除したいなら提供(ていきょう)して、催告(さいこく)して。
ビジュアル描写
相手が商品を渡さないからといって、自分もお金を出さずに「やめる!」と言ってもダメ。まず「お金はあるよ(提供)」と見せてから「渡さないならやめる(解除)」と言うイメージ。
重要公式
解除の成立 = 債務不履行 + (履行の提供) + 催告 + 解除の意思表示。
関連連想
「解除」は「契約終了」のゴール。ゴールするには自分もスタートライン(提供)に立っていないといけない。
比較表
同時履行の抗弁(533条):履行を拒否できる。解除(541条):提供+催告が必要。
05試験テクニック
出題頻度
高頻度(毎年出題)
重要度
A(最重要)。実務でも頻出の論点。
出題パターン
  • 提供なしで解除できるか
  • 使用料を請求できるか
  • 危険負担との絡み
解法・消去法
「使用料相当額を支払う」「損害賠償請求できる」などの記述は常識的に正しいことが多く、残った論理的な選択肢を検討する。
時間戦略
「提供」の有無を即座にチェックし、論理構成が明確な選択肢から判断する。
06実務応用
実務シナリオ
売主が引き渡し期日を過ぎても物件を渡さないため、買主が契約を解除したいと考える場面。
実務への影響
買主が安易に解除を宣言できないよう、手続きを厳格にすることで契約関係の安定を図っている。
ケーススタディ
マンション購入で売主が引き渡しを遅延。買主が代金支払いの提供なしに解除通知を送ったが、無効と判断された事例。
業界関連性
売買契約書の解除条項作成や、クレーム対応の基本となる知識。
ニュース連動
住宅欠陥問題や、引渡し遅延に関する消費者トラブルで関連性が高い。
07よくある間違い
同時履行の抗弁権があれば、自分の債務の提供なしに解除できると考える。
なぜ間違えるか:抗弁権は履行拒否の権利に過ぎず、解除の要件(提供)を満たさないため。
契約解除後は、相手に支払った金額が全額無条件で返ってくると考える。
なぜ間違えるか:受けた利益(使用料等)も返還義務(原状回復)の対象となるため。
解説は、まだ続きます
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