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相殺

相殺とは、互いに同種の債権を有する二人の間で、一方の意思表示により対当額で両債権を消滅させる制度です。決済の簡略化と公平を図る趣旨があります。相殺を主張する者の債権を自働債権、相手方の債権を受働債権といいます。相殺は形成権であり、相手方の同意不要で一方的に効力を生じます。当事者間では相殺適状に達した時に遡って効力が生じます。

民法505条(相殺の要件と効力)民法506条(相殺の方法と効力発生時期)民法507条(時効の利益と相殺)

重要度: 重要

要点
相殺とは、互いに同種の債権を有する二人の間で、一方の意思表示により対当額で両債権を消滅させる制度です。決済の簡略化と公平を図る趣旨があります。相殺を主張する者の債権を自働債権、相手方の債権を受働債権といいます。相殺は形成権であり、相手方の同意不要で一方的に効力を生じます。当事者間では相殺適状に達した時に遡って効力が生じます。
体系における位置づけ
民法(権利関係)は宅建試験の主要科目の一つで、総則、物権、債権、親族相続の4分野から構成されます。相殺は債権総論に位置し、債権消滅事由の一つとして重要です。債権の発生、変更、消滅の流れを理解する上で、相殺は弁済と並ぶ重要な制度です。宅建業法や法令上の制限とも関連し、実務でも頻繁に活用されます。
ルールの詳細
相殺の要件として、双方が互いに債権を有し、目的物の種類と品質が同一であることが必要です。金銭債権同士が典型的です。 ・自働債権は弁済期にあることが必要ですが、受働債権は期限の利益を放棄すれば期限前でも相殺可能です。 ・相殺は意思表示のみで行われ、相手方の承諾は不要です。この意思表示には条件や期限を付けることはできません。 ・相殺禁止の特約がある債権は相殺できません。ただし、その特約は善意の第三者に対抗できない場合があります。 ・不法行為による損害賠償請求権を受働債権とする相殺は禁止されています。被害者の保護が目的です。 ・差押禁止債権を受働債権とする相殺は禁止されています。債務者の生活保護が目的です。 ・第三者に差し押さえられた債権を自働債権とする相殺は、差押え前に原因がある場合に限り可能です。
例外
不法行為の被害者が加害者に対して有する損害賠償請求権を受働債権とする相殺は、加害者の一方的な意思表示では認められません(民法509条)。 ・債権が第三者に差し押さえられた後は、債務者は差押え前に取得した対抗債権以外で相殺することができません(民法508条)。 ・差押禁止債権(生活保護的な債権)を受働債権とする相殺は認められず、債務者の最低生活を保護します(民法510条)。
比較・対照
自働債権と受働債権の区別は、どちらが相殺を主張するかで決まります。自働債権は弁済期にある必要がありますが、受働債権は期限前でも期限の利益を放棄すれば相殺可能です。
記憶テクニック
「自働は期限あり、受働は放棄でOK」:自働債権は弁済期にある必要があるが、受働債権は期限の利益を放棄すれば期限前でもOK。 ・「不法は加害者禁止、被害者OK」:不法行為債権は加害者からの相殺禁止、被害者からの相殺はOK。 ・「差押え前の債権で相殺OK」:第三者に差し押さえられた後でも、差押え前に取得した債権であれば相殺可能。
事例で確認

相殺」はこう問われる

AはBから1000万円を借り入れていた。期限が到来した後、BがAに対して故意に傷害を負わせ、AがBに1000万円の損害賠償請求権を有することとなった。Bは借入金返済請求権とAの損害賠償請求権を相殺できるか。 Bは不法行為に基づく損害賠償請求権を受働債権として相殺できるか?
結論:Bは相殺することができません。民法509条により禁止されています。
民法509条は、不法行為による損害賠償請求権を受働債権とする相殺を禁止しています。これは被害者の保護を目的とした規定です。Bが加害者であり、Aの損害賠償請求権を受働債権とする相殺は認められません。Aが自らの損害賠償請求権を自働債権として相殺することは可能です。
押さえる:不法行為の被害者保護のため、加害者からの相殺は禁止されています。誰が相殺を主張するか(自働債権か受働債権か)が重要です。
AはBに対し期限の定めのない1000万円の貸金債権を有している。BはAに対し弁済期が1年後に到来する500万円の貸金債権を有している。Aは現在、Bに対して相殺できるか。 期限前の債権を受働債権として相殺できるか?
結論:Aは500万円について相殺することができます。残額500万円はBに請求可能です。
相殺において、自働債権は弁済期にある必要がありますが、受働債権は期限前であっても期限の利益を放棄すれば相殺可能です。Aの債権は期限なしで弁済期にあり、Bの債権は期限前ですが、Aが相殺を主張する場合、Bの期限の利益を放棄して相殺できます。
押さえる:受働債権の期限前でも、期限の利益を放棄すれば相殺可能です。自働債権は必ず弁済期にある必要があります。
試験での狙われ方

出題傾向と対策

出題頻度出題なし
出題実績過去 37 年で 0 回・0 年分
重要度A:最重要。相殺の要件、禁止債権、自働・受働債権の区別は必須知識です。
解き方のコツ自働債権と受働債権を図示して整理する習慣をつけましょう。相殺禁止債権(不法行為、差押禁止)は暗記必須です。期限の利益放棄と相殺の関係も確実に理解してください。
よく問われるパターン
  • 相殺の可否を問う問題:不法行為債権、差押禁止債権、期限前債権などでの相殺可否を判定させる。
  • 自働債権と受働債権の区別問題:どちらが自働債権になりうるか、弁済期の要件を問う。
  • 相殺の効力発生時期問題:遡及効、対第三者関係を問う。
  • 債権譲渡と相殺の複合問題:譲渡通知前後の相殺可否を問う。
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Q1【2025年 問4】AがBから弁済の期限の定めなく金「1,000万円を借り入れる金銭消費貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
解答: 正解:4 Aが、期限が到来しているBの悪意による不法行為に基づく金1,000万円の損害賠償請求債権をBに対して有している場合、Aは本件契約に基づく返還債務をBに対する当該損害賠償請求債権で相殺することができる。 【解説】解説 したがって正しい記述は[4]です。
Q2【2023年 問4】AがBに対して貸金債権である甲債権を、BがAに対して貸金債権である乙債権をそれぞれ有している場合において、民法の規定及び判例によれば、次のアからエまでの記述のうち、Aが一方的な意思表示により甲債権と乙債権とを対当額にて相殺できないものを全て掲げたものは、次の1から4のうちどれか。なお、いずれの債権も...
解答: 正解:4 エ 【解説】解説 相殺 (そうさい)は、2人が互いに同じ種類の債務を有しているときに、一方からの意思表示により、対当額の債務を消滅させることができる制度です。たとえば、Aが...
よくある質問

相殺について

宅建の「相殺」とは何ですか?
相殺とは、互いに同種の債権を有する二人の間で、一方の意思表示により対当額で両債権を消滅させる制度です。決済の簡略化と公平を図る趣旨があります。相殺を主張する者の債権を自働債権、相手方の債権を受働債権といいます。相殺は形成権であり、相手方の同意不要で一方的に効力を生じます。当事者間では相殺適状に達した時に遡って効力が生じます。
「相殺」は宅建でよく出ますか?
本試験の過去問データでは、この論点名で直接問われた出題は確認できませんが、関連する論点の中で問われることがあります。
相殺は契約であり、当事者双方の合意が必要である。
×。相殺は一方的意思表示により行われ、相手方の承諾は不要です。形成権の一種です。
自働債権は弁済期にある必要があるが、受働債権は期限前でも期限の利益を放棄すれば相殺可能である。
○。自働債権は弁済期にあることが要件ですが、受働債権については期限前でも期限の利益を放棄すれば相殺可能です。
不法行為による損害賠償請求権は、加害者・被害者のいずれの側からも相殺できない。
×。不法行為による損害賠償請求権を受働債権とする相殺(加害者からの相殺)のみ禁止です。被害者が自働債権として相殺することは可能です。
「相殺」の覚え方は?
「自働は期限あり、受働は放棄でOK」:自働債権は弁済期にある必要があるが、受働債権は期限の利益を放棄すれば期限前でもOK。 ・「不法は加害者禁止、被害者OK」:不法行為債権は加害者からの相殺禁止、被害者からの相殺はOK。 ・「差押え前の債権で相殺OK」:第三者に差し押さえられた後でも、差押え前に取得した債権であれば相殺可能。
2026年の本試験は 10月18日(日)
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