平成12年(2000)本試験
問8
不法行為過去問
この問題の全体像
不法行為における過失相殺の職権適用と共同不法行為の効果を問う問題。特に2000年当時の判例法理に基づき、過失相殺は裁判所が職権でできるが、共同不法行為者は被害者に対して連帯して全額を賠償する責任を負う点が正解となる。
Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 1Aの不法行為に関し、Bにも過失があった場合でも、Aから過失相殺の主張がなければ、裁判所は、賠償額の算定に当たって、賠償金額を減額することができない。
- 2不法行為がAの過失とCの過失による共同不法行為であった場合、Aの過失がCより軽微なときでも、Bは、Aに対して損害の全額について賠償を請求することができる。
- 3Bが、不法行為による損害と加害者を知った時から1年間、損害賠償請求権を行使しなければ、当該請求権は消滅時効により消滅する。
- 4Aの損害賠償債務は、BからAへ履行の請求があった時から履行遅滞となり、Bは、その時以後の遅延損害金を請求することができる。
この問題の詳しい解説
POINT
この問題のポイント
不法行為における過失相殺の職権適用と共同不法行為の効果を問う問題。
この問題は、6 つの視点でさらに深掘りできます
02
深度分析
不法行為における過失相殺の職権適用と共同不法行為の効果を問う問題。特に2000年当時の判例法理に基づき、過失相殺は裁判所が職権ででき…
03
知識背景
不法行為制度において、被害者にも過失がある場合の賠償額の調整(過失相殺)と、複数の加害者が関与した場合の責任の所在(共同不法行為)に…
04
覚え方
「共同不法は全額請求、過失相殺は職権で(当時)」と覚える。
05
試験のコツ
過失相殺の職権適用の可否
・共同不法行為者の一人への全額請求の可否
・消滅時効の期間(1年か3年か)
06
実務での見え方
建設現場で元請け業者Aと下請け業者Cの共同過失で近隣の家Bを損壊させた場合、Bは資力のあるAに対して全額を請求できる。
07
よくある間違い
{"mistake":"不法行為の消滅時効を1年と覚えている。","why_wrong":"債権の短期消滅時効(1年や2年)と混同し…
02深度分析
要約
不法行為における過失相殺の職権適用と共同不法行為の効果を問う問題。特に2000年当時の判例法理に基づき、過失相殺は裁判所が職権でできるが、共同不法行為者は被害者に対して連帯して全額を賠償する責任を負う点が正解となる。
法的根拠
民法719条(共同不法行為)民法722条(過失相殺)民法724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)民法412条(履行遅滞)民法418条(過失相殺)
論理の流れ
選択肢1は、2000年当時の判例(最判昭49.9.26等)では不法行為における過失相殺は裁判所が職権でできると解されていたため誤り。選択肢2は、民法719条に基づき共同不法行為者は各自全額の賠償責任を負うため正しい。選択肢3は、時効期間が3年であるため誤り。選択肢4は、不法行為による債務は不法行為の時に履行遅滞となるため誤り。
重要な区別
債務不履行(418条)と不法行為(722条)における過失相殺の「職権適用の可否」の違い、および共同不法行為における「連帯責任」の範囲。
各選択肢のポイント
- 2000年当時、不法行為では裁判所が職権で過失相殺できると解されていたため。
- 共同不法行為者は連帯して損害を賠償する責任を負うため、全額請求が可能。
- 被害者が損害および加害者を知った時から3年間行使しないと時効消滅するため。
- 不法行為による損害賠償債務は、原則として不法行為の時に履行遅滞となるため。
03知識背景
テーマ概要
不法行為制度において、被害者にも過失がある場合の賠償額の調整(過失相殺)と、複数の加害者が関与した場合の責任の所在(共同不法行為)に関するルール。被害者保護と公平のバランスを図るための重要な規定。
歴史的背景
1996年の最高裁判決で債務不履行における職権過失相殺が否定されたが、不法行為においては長らく職権による過失相殺が認められており、2000年時点ではその解釈が試験のポイントとなっていた。
関連法令
民法719条民法722条民法418条民法412条2項大審院判例(大正15.5.22)
体系的位置づけ
民法「債権」各論の不法行為における核心的論点であり、宅建試験では頻出の重要分野。
前提知識
不法行為の成立要件(709条)、過失相殺の基本的意味、連帯債務の内容(履行の請求、免除等の絶対的効力)、消滅時効の起算点と期間。
04記憶テクニック
語呂合わせ
「共同不法は全額請求、過失相殺は職権で(当時)」と覚える。
ビジュアル描写
AとCが壁を壊した場合、BはAに「全部払って!」と指を指せるイメージ。一方で、Bも少し壁を薄くしていたら、裁判官が勝手に賠償額を減らすイメージ。
重要公式
共同不法行為=連帯責任=全額請求可。
関連連想
「共同」=「全員で責任を取る」=「一人に全部請求できる」と連想。
比較表
債務不履行(418条):主張必要。不法行為(722条):職権適用可(当時の判例)。現在は学説対続あり。
05試験テクニック
出題頻度
高頻度。共同不法行為と過失相殺は2〜3年に1回は出題される。
重要度
A:最重要。不法行為の基本構造を理解する上で不可欠。
出題パターン
- 過失相殺の職権適用の可否
- 共同不法行為者の一人への全額請求の可否
- 消滅時効の期間(1年か3年か)
解法・消去法
時効期間の「1年」は明らかに短すぎるため×。履行遅滞が「請求時」からは債務不履行特有の考え方で、不法行為では通常発生時となるため×。
時間戦略
判例の知識が即座に出ない場合は、消滅時効の数字(1年は短い)や履行遅滞の時期で消去法を。
06実務応用
実務シナリオ
建設現場で元請け業者Aと下請け業者Cの共同過失で近隣の家Bを損壊させた場合、Bは資力のあるAに対して全額を請求できる。
実務への影響
被害者が賠償金を確実に回収するために、資力のある加害者を選んで全額請求できる実益がある。
ケーススタディ
交通事故で加害車両と道路管理者に過失があった事案において、被害者が一方に全額請求を認められた判例。
業界関連性
不動産取引における瑕疵担保責任や事故時の損害賠償請求の基礎となる。
ニュース連動
自動運転車の事故において、運転者とメーカーの共同不法行為責任が論じられる現代的な話題。
07よくある間違い
不法行為の消滅時効を1年と覚えている。
なぜ間違えるか:債権の短期消滅時効(1年や2年)と混同しているため。
正しい理解:「不法行為は重い罪、時効も長い(3年)」と覚える。
過失相殺は常に加害者が主張しないと適用されないと思っている。
なぜ間違えるか:債務不履行はそうだが、当時の不法行為では裁判所が職権で行えたため。
正しい理解:「不法行為=公平原則=職権介入」という図式を理解する。
履行遅滞の開始時期を「請求があった時」と答える。
なぜ間違えるか:不法行為に基づく債務は、不法行為の時(損害発生時)に遅滞となるため。
正しい理解:「不法行為=発生=遅滞」とセットで覚える。
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