無権代理
無権代理とは、代理権を有しない者が代理人としてした法律行為をいい、本人の追認がなければ本人に対して効力を生じません(民法113条)。代理人の暴走により、本人も相手方も何も知らなければ悪くないという原則から、相手方には催告権・取消権・無権代理人への責任追及権を、本人には追認権を認め、三者間の利益調整を図ります。
民法113条(無権代理行為の追認)民法114条(相手方の催告権)民法115条(相手方の取消権)
重要度: 重要
要点
無権代理とは、代理権を有しない者が代理人としてした法律行為をいい、本人の追認がなければ本人に対して効力を生じません(民法113条)。代理人の暴走により、本人も相手方も何も知らなければ悪くないという原則から、相手方には催告権・取消権・無権代理人への責任追及権を、本人には追認権を認め、三者間の利益調整を図ります。
体系における位置づけ
民法(権利関係)は宅建試験の主要科目の一つで、総則、物権、債権、親族相続の分野から構成されます。中でも代理制度は私人の法律関係の基礎となる重要制度で、無権代理と表見代理は代理制度の理解を深める核心的分野です。権利関係全体の約3割を占め、条文の理解と判例知識の両方が求められます。
ルールの詳細
・無権代理人が本人の代理人としてした法律行為は、本人の追認がなければ本人に対してその効力を生じない(民法113条1項)。
・相手方は本人に対して相当の期間を定めて追認するか否かを確答すべき旨を催告することができ、期間内に確答がないときは追認を拒絶したものとみなされる(民法114条)。
・無権代理行為を本人が追認しない間は、相手方はこれを取り消すことができる。ただし、相手方が無権代理であることを知っていたときは取消しできない(民法115条)。
・相手方が無権代理であることを知らず、かつ過失がなかったときは、無権代理人に対して履行又は損害賠償を請求できる(民法116条)。
・無権代理人が代理権を有しないことを相手方が知り、又は過失によって知らなかったときは、無権代理人は責任を負わない(民法117条)。
例外
・単独行為については、その行為の時に相手方が代理権なしと知っていた場合、その行為は無効となる(民法118条)。
・本人が追認拒絶後に無権代理人が本人を相続しても、無権代理行為は有効とはならない(最判平10.7.17)。
・無権代理人が本人を相続した場合、単独で追認することはできず、本人の地位を承継するにすぎないとされる。
比較・対照
無権代理と表見代理の最大の違いは本人の帰責性の有無です。表見代理は本人に作為・不作為があり本人に効果が及ぶが、無権代理は本人に帰責性がなく追認がなければ効果は及ばない。
記憶テクニック
・「無権代理は代理人の暴走」→本人も相手方も悪くない→本人は追認で判断、相手方は催告・取消・責任追及で対応
・「善意無過失の相手方だけが救済」→民法116条の責任追及も115条の取消権も善意の相手方限定
・「催告は誰でも、取消は善意だけ」→民法114条の催告権は悪意でも可、115条の取消権は善意のみ
事例で確認
「無権代理」はこう問われる
A所有の土地について、Aから代理権を与えられていないBが、Aの代理人としてCとの間で売買契約を締結した。CはBに代理権がないことを知らなかった。Aは追認を拒絶した。 Cは誰に対してどのような請求ができるか?
結論:CはBに対して履行又は損害賠償を請求できる。
Aが追認を拒絶したため、売買契約はAに対して効力を生じない(民法113条)。Cは善意無過失であれば、無権代理人Bに対して履行又は損害賠償を請求できる(民法116条)。ただし、Cに過失があればBは責任を負わない(民法117条)。
押さえる:無権代理では本人が追認拒絶後、善意無過失の相手方は無権代理人に責任追及できる。
Aの代理人としてBがCと売買契約を締結した後、Aが死亡し、BがAの唯一の相続人となった。Bは自分の無権代理行為を追認できるか。 Bは自己の無権代理行為を有効にできるか?
結論:Bは自己の無権代理行為を単独で追認することはできない。
無権代理人が本人を相続した場合、本人の地位を包括的に承継するが、自己の法律行為を自己の意思で有効にすることは、信義則に反するとされる。判例は、本人が追認拒絶後の相続であっても、追認前の相続であっても、無権代理人が単独で追認することはできないとしている。
押さえる:無権代理人が本人を相続しても、自己の行為を有効にする追認権は行使できない。
試験での狙われ方
出題傾向と対策
| 出題頻度 | 出題なし |
|---|---|
| 出題実績 | 過去 37 年で 0 回・0 年分 |
| 重要度 | A:最重要。代理制度の核心であり、判例知識も含めて正確な理解が求められる。 |
| 解き方のコツ | 無権代理の問題は「相手方」と「本人」に分けて整理する。相手方は善意か悪意か、本人は追認するか否かを確認する習慣をつけること。 |
よく問われるパターン
- 無権代理人の責任の要件として、相手方の善意無過失が必要であることを問う問題。
- 本人の追認拒絶後の無権代理人による相続の効果を問う問題。
- 相手方の催告権と取消権の行使要件の違いを問う問題。
- 無権代理と表見代理の要件・効果の違いを問う問題。
関連過去問
この論点が問われた本試験
本試験 37 年分から、「無権代理」に関連する過去問をピックアップしました。
理解度チェック
この論点を、確かめる
解説の理解を確認する自己テスト。詳しい解説はアプリで。
Q1【2019年 問5】次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び判例並びに下記判決文によれば、誤っているものはどれか。 (判決文) 本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。けだし、無権代理人がした行為は、本人がそ...
解答: 正解:2
本人が追認拒絶をした後に無権代理人が本人を相続した場合と、本人が追認拒絶をする前に無権代理人が本人を相続した場合とで、法律効果は同じである。
【解説】解説 したがって誤っている記述は[2]です。 参考URL: 最判平10.7.17 https://www.courts.go.jp/hanrei/52792/d...
Q2【2012年 問4】A所有の甲土地につき、Aから売却に関する代理権を与えられていないBが、Aの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、表見代理は成立しないものとする。
解答: 正解:2
Aの死亡により、BがAの唯一の相続人として相続した場合、Bは、Aの追認拒絶権を相続するので、自らの無権代理行為の追認を拒絶することができる。
【解説】解説 したがって誤っている記述は[2]です。
よくある質問
無権代理について
宅建の「無権代理」とは何ですか?
無権代理とは、代理権を有しない者が代理人としてした法律行為をいい、本人の追認がなければ本人に対して効力を生じません(民法113条)。代理人の暴走により、本人も相手方も何も知らなければ悪くないという原則から、相手方には催告権・取消権・無権代理人への責任追及権を、本人には追認権を認め、三者間の利益調整を図ります。
「無権代理」は宅建でよく出ますか?
本試験の過去問データでは、この論点名で直接問われた出題は確認できませんが、関連する論点の中で問われることがあります。
無権代理行為は、本人が追認しなければ、本人に対してその効力を生じない。
○。民法113条1項のとおり。本人の追認がなければ無権代理行為は本人に効力を生じない。
無権代理行為の相手方は、善意・悪意を問わず、本人に対して追認するか否かの催告をすることができる。
○。民法114条の催告権は、相手方が無権代理を知っていたか否かにかかわらず行使できる。
無権代理行為の相手方は、善意・悪意を問わず、本人が追認しない間は契約を取り消すことができる。
×。民法115条の取消権は、相手方が無権代理であることを知らなかった場合にのみ行使できる。悪意の相手方は取消権を有しない。
「無権代理」の覚え方は?
「無権代理は代理人の暴走」→本人も相手方も悪くない→本人は追認で判断、相手方は催告・取消・責任追及で対応
・「善意無過失の相手方だけが救済」→民法116条の責任追及も115条の取消権も善意の相手方限定
・「催告は誰でも、取消は善意だけ」→民法114条の催告権は悪意でも可、115条の取消権は善意のみ
次の一歩
この論点を、定着させる
さあ、はじめよう
無権代理を、アプリで演習する