債務不履行
債務不履行とは、債務者が債務の本旨に従った履行をしないことをいい、履行遅滞、履行不能、不完全履行の三つの類型があります。債務者の帰責事由(責めに帰すべき事由)がある場合、債権者は損害賠償を請求したり、契約を解除したりすることができます。改正民法では、帰責事由の立証責任が債務者に転換されました。
民法412条(履行遅滞に関する規定)民法412条の2(履行不能に関する規定)民法415条(債務不履行の効果)
重要度: 重要
要点
債務不履行とは、債務者が債務の本旨に従った履行をしないことをいい、履行遅滞、履行不能、不完全履行の三つの類型があります。債務者の帰責事由(責めに帰すべき事由)がある場合、債権者は損害賠償を請求したり、契約を解除したりすることができます。改正民法では、帰責事由の立証責任が債務者に転換されました。
体系における位置づけ
民法(権利関係)は、私人間の権利義務関係を規律する法分野です。債権関係を中心に、契約、不法行為、事務管理、不当利得などが含まれます。宅建試験では権利関係全体で約50点中14点程度を占め、民法の理解は不動産取引の法的基礎として不可欠です。債権編は特に重要で、債務不履行は契約責任の核心的概念です。
ルールの詳細
・履行遅滞:履行が可能であるのに、履行期を過ぎても履行しない場合。債務者の帰責事由が必要。改正民法で債務者が無過失を立証する形式に変更。
・履行不能:債務の履行が客観的に不可能になった場合。当初不能と後発不能がある。債務者の帰責事由があれば損害賠償責任を負う。
・不完全履行:履行はされたが、それが不完全で債務の本旨に従わない場合。瑕疵担保責任との関係が問題となる。
・帰責事由:債務者の故意・過失。改正民法415条2項で債務者が不可抗力を立証する形式に。
・損害賠償:履行に代わる損害賠償と遅延損害賠償がある。通常損害と特別損害の区別。
・解除権:債務不履行があれば債権者は契約を解除できる。ただし相当の期間を定めて催告が必要(原則)。
例外
・定期行為の解除:履行期の経過により契約の目的を達成できない場合、催告なしで解除可能(民法542条)。
・一部不能:債務の一部が不能の場合、残部についても解除できる場合がある。
・債権者帰責事由:債権者の責めに帰すべき事由による履行不能では、債務者は免責される。
・不可抗力:天災など債務者の責めに帰すことのできない事由による場合は免責される。
比較・対照
債務不履行の三類型は履行の可能性と時期で区別します。改正民法では立証責任が債務者に転換され、債権者保護が強化されました。瑕疵担保責任との違いは契約時の瑕疵の存在と無過失責任か否かです。
記憶テクニック
・「遅れてもできる、できない、不完全」→履行遅滞(できる)、履行不能(できない)、不完全履行(不完全)の三類型。
・「債務者立証に変わった」→改正民法で帰責事由の立証責任が債務者に転換された。
・「金欠は言い訳にならない」→金銭債務では資力不足は免責事由にならない(民法419条)。
事例で確認
「債務不履行」はこう問われる
AはBから土地を購入し、代金3000万円を支払った。Bは約束の引渡期日を過ぎても土地を引き渡さない。Bは「所有権移転登記の手続きが市役所のシステムトラブルで遅れた」と主張している。Aはどう対応できるか。 AはBに対してどのような請求ができるか。
結論:原則として損害賠償請求または解除が可能。ただし真に不可抗力なら免責される可能性あり。
Bの主張は市役所のシステムトラブルという第三者の事情であり、B自身の帰責事由に該当するかが問題となる。改正民法415条2項では、債務者が自己に帰責事由がないことを立証する必要がある。市役所のトラブルはBの監督責任の及ばない事由と考えられ、不可抗力として免責される可能性がある。ただし、登記手続きの遅延がBの過失による可能性も検討が必要。
押さえる:帰責事由の立証責任は債務者にあるが、不可抗力の認定は厳格に行われる。
CはDに自宅を売却した。引渡し後、Dは基礎のひび割れを発見した。調査の結果、契約時には存在しなかったが、Cの不適切な改修工事により生じたものと判明。DはCに損害賠償を請求できるか。 契約後に生じた瑕疵について売主の責任はあるか。
結論:不完全履行として債務不履行責任を追及できる。
瑕疵担保責任は契約時に瑕疵が存在することが要件だが、本件は契約後の瑕疵。しかし、Cの不適切な改修工事は不完全履行として債務不履行責任を問える。Cに帰責事由(過失)が認められ、債務の本旨に従った履行がなされていないため、民法415条に基づく損害賠償請求が可能。
押さえる:瑕疵担保責任と不完全履行の使い分けを理解する。契約時の瑕疵か否かが分かれ目。
試験での狙われ方
出題傾向と対策
| 出題頻度 | 2〜3 年に 1 回 |
|---|---|
| 出題実績 | 過去 37 年で 10 回・10 年分・最新 2024 年 |
| 重要度 | A:最重要。民法の基礎概念であり、契約責任の核心をなす。他分野への波及効果も大きく、確実な理解が必須。 |
| 解き方のコツ | 三類型の要件を正確に暗記し、帰責事由の立証責任の変更点を確実に理解すること。金銭債務の特則(419条)も重要。具体例に当てはめて判断する練習を積むこと。 |
よく問われるパターン
- 三類型(履行遅滞・履行不能・不完全履行)の識別問題。各類型の要件と効果を問う。
- 帰責事由の立証責任に関する問題。改正民法との関連で出題される。
- 債務不履行の効果(損害賠償・解除)の要件と範囲を問う問題。
- 債権者帰責事由や不可抗力による免責を問う問題。
- 瑕疵担保責任と不完全履行の区別を問う問題。
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Q1【2020年 問104】債務不履行に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
解答: 正解:2
債務の目的が特定物の引渡しである場合、債権者が目的物の引渡しを受けることを理由なく拒否したため、その後の履行の費用が増加したときは、その増加額について、債権者と債務者はそれぞれ半額ずつ負担しなければな...
【解説】解説 したがって誤っている記述は[2]です。
Q2【2012年 問8】債務不履行に基づく損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
解答: 正解:4
AB間の金銭消費貸借契約において、借主Bは当該契約に基づく金銭の返済をCからBに支払われる売掛代金で予定していたが、その入金がなかった(Bの責めに帰すべき事由はない。)ため、返済期限が経過してしまった...
【解説】解説 したがって誤っている記述は[4]です。
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よくある質問
債務不履行について
宅建の「債務不履行」とは何ですか?
債務不履行とは、債務者が債務の本旨に従った履行をしないことをいい、履行遅滞、履行不能、不完全履行の三つの類型があります。債務者の帰責事由(責めに帰すべき事由)がある場合、債権者は損害賠償を請求したり、契約を解除したりすることができます。改正民法では、帰責事由の立証責任が債務者に転換されました。
「債務不履行」は宅建でよく出ますか?
本試験では過去 37 年間で 10 回、10 年分で出題されています。出題傾向は「2〜3 年に 1 回」です。
履行遅滞が成立するには、債務者の帰責事由が必要である。
○正解。履行遅滞の成立には債務者の帰責事由が必要。ただし、改正民法では債務者が無過失を立証する形式となった。
履行不能の場合、債権者は履行の請求をすることができる。
×誤り。履行不能の場合、履行は客観的に不可能であるため、履行の請求はできない。損害賠償または解除のみ可能。
金銭債務の不履行において、債務者の資力不足は免責事由となる。
×誤り。民法419条により、金銭債務では債務者の資力不足は免責事由にならない。不可抗力でも責任を負う。
「債務不履行」の覚え方は?
「遅れてもできる、できない、不完全」→履行遅滞(できる)、履行不能(できない)、不完全履行(不完全)の三類型。
・「債務者立証に変わった」→改正民法で帰責事由の立証責任が債務者に転換された。
・「金欠は言い訳にならない」→金銭債務では資力不足は免責事由にならない(民法419条)。
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