平成29年(2017)本試験
問4
権利関係民法に規定されているもの過去問
この問題の全体像
民法の具体的な条文規定に関する知識を問う問題です。特に囲繞地通行権における通行場所の選択基準について、条文の正確な文言(「損害が最も少ないもの」)と誤った記述(「自由に選んで」)を区別できるかが鍵となります。
次の記述のうち、民法の条文に規定されていないものはどれか。
- 1権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、その合意があった時から1年を経過した時までは、時効は完成しない旨
- 2他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行することができる旨
- 3売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う旨
- 4賃借人の原状回復義務の対象となる損傷からは、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年劣化を除く旨
この問題の詳しい解説
POINT
この問題のポイント
民法の具体的な条文規定に関する知識を問う問題です。
この問題は、6 つの視点でさらに深掘りできます
02
深度分析
民法の具体的な条文規定に関する知識を問う問題です。特に囲繞地通行権における通行場所の選択基準について、条文の正確な文言(「損害が最も…
03
知識背景
この問題は、民法の物権法(隣地通行権)および債権法(時効、売買、賃貸借)の各分野から、具体的な条文の有無や内容を問うものです。特に改…
04
覚え方
囲繞地(いじょうち)は、維持(いじ)するために『損害最少(そんがいさいしょう)』のルートを行く。
05
試験のコツ
条文の文言を一部書き換えた誤り選択肢の作成
・改正民法で新設された条文と旧法の解釈の混在
・判例法理が条文化された部分の出題
06
実務での見え方
公道に面していない土地(袋地)を購入する際、その土地を取り囲む所有者に対して通行権を主張する場面。通行位置について「どこでも通らせろ…
07
よくある間違い
{"mistake":"「自分の土地だからどこを通ってもいい」と思い込み、選択肢2を正しいと判断する。","why_wrong":"…
02深度分析
要約
民法の具体的な条文規定に関する知識を問う問題です。特に囲繞地通行権における通行場所の選択基準について、条文の正確な文言(「損害が最も少ないもの」)と誤った記述(「自由に選んで」)を区別できるかが鍵となります。
法的根拠
民法213条(囲繞地通行権)民法151条の2(時効の完成猶予:権利についての協議)民法621条(賃借人の原状回復義務等)民法555条(売買)
論理の流れ
選択肢1は民法151条の2に規定される時効完成猶予の制度であり、条文に存在します。選択肢4は改正民法621条で明文化された原状回復義務の除外規定であり、条文に存在します。選択肢3は売主の権利移転義務(民法555条)の解釈上当然とされる登記協力義務であり、実質的に規定されていると評価されます。一方、選択肢2は民法213条が通行場所について「損害が最も少しいもの」を選ぶべきとしているのに対し、「自由に選んで」と記述しており、条文の内容と異なります。したがって、条文に規定されていないものは2です。
重要な区別
囲繞地通行権において、通行場所は「自由に選べる」のではなく、「損害が最も少ない場所及び方法」でなければならない点。
各選択肢のポイント
- 民法151条の2に、権利についての協議を行う旨の合意が書面でされた場合の時効完成猶予について規定されている。
- 民法213条は、通行の場所について「損害が最も少しいもの」を選ぶべきとしており、「自由に選んで」とは規定していない。
- 民法555条の売買による所有権移転義務には、登記等の対抗要件を備えさせる義務(登記協力義務)が含まれると解される。
- 改正民法621条において、通常の使用及び収益によって生じた損耗等は原状回復義務の対象外であることが明文化された。
03知識背景
テーマ概要
この問題は、民法の物権法(隣地通行権)および債権法(時効、売買、賃貸借)の各分野から、具体的な条文の有無や内容を問うものです。特に改正民法により新設または明文化された規定と、従来からの規定を組み合わせて出題されています。
歴史的背景
時効の協議による完成猶予(選択肢1)と賃借人の原状回復義務の範囲(選択肢4)は、2017年成立・2020年施行の民法改正(債権法改正・相続法改正等)によって新たに条文に加えられた規定です。これにより、判例法理であった内容が成文法化されました。
関連法令
民法210条(公道に至るための囲繞地通行権)民法213条(通行権・掘削権)民法151条の2民法621条民法555条
体系的位置づけ
宅建試験の「権利関係」分野における「民法条文問題」に位置づけられます。単なる暗記だけでなく、条文の正確な文言や趣旨を理解しているかを試す基本問題です。
前提知識
囲繞地通行権の内容(通行場所や償金の要否)、民法改正による時効中断事由の変更、賃貸借終了時における原状回復義務の範囲(経年劣化の取扱い)、売主の担保責任や権利移転義務の内容についての基礎知識が必要です。
04記憶テクニック
語呂合わせ
囲繞地(いじょうち)は、維持(いじ)するために『損害最少(そんがいさいしょう)』のルートを行く。
ビジュアル描写
袋地の所有者が公道に出るために、隣の土地(囲繞地)を通るイメージ。ただし、隣の家の庭の真ん中を突っ切るのではなく、隅のあぜ道を通るような図を思い浮かべる。
重要公式
囲繞地通行権 = 損害最少原則
関連連想
「自由」という言葉は魅力的だが、法律では他人の権利を害する「自由」は制限される。通行権は「不自由」な権利と覚える。
比較表
通行権の比較:袋地(他の土地に囲まれ公道に通じない土地)の所有者は、囲繞地を通行できるが、その場所は「自由」ではなく「損害最少」に限定される。
05試験テクニック
出題頻度
毎年出題
重要度
A:最重要。条文の正確な知識は得点源となる。
出題パターン
- 条文の文言を一部書き換えた誤り選択肢の作成
- 改正民法で新設された条文と旧法の解釈の混在
- 判例法理が条文化された部分の出題
解法・消去法
選択肢2の「自由に選んで」という表現は、隣人の権利を制限する強い内容であるため、民法の原則(隣人関係調整)に照らして違和感を持つと消去しやすい。
時間戦略
条文知識があれば即答可能な問題。知らない場合でも、「自由に選んで」などの強い表現に警戒して時間をかけすぎないようにする。
06実務応用
実務シナリオ
公道に面していない土地(袋地)を購入する際、その土地を取り囲む所有者に対して通行権を主張する場面。通行位置について「どこでも通らせろ」と主張しても認められず、相手方に最も迷惑がかからないルートを要求されることになる。
実務への影響
不動産取引において、袋地の価格評価や通行地役権の設定協議を行う際、民法213条の「損害最少」原則が具体的な交渉の基準となる。
ケーススタディ
袋地の所有者が隣地の駐車場部分を通行しようとしたところ、隣地所有者が「庭への影響が少ない裏側を通行してほしい」と主張した事例。民法213条に基づき、原則として裏側の通行が認められる。
業界関連性
土地の形状や接道状況を確認する際、通行権の有無や内容は価格に大きな影響を与えるため、不動産業者には必須の知識。
ニュース連動
再開発事業や道路整備に伴う用地買収において、袋地の処理や代替通路の設定が問題となることがある。
07よくある間違い
「自分の土地だからどこを通ってもいい」と思い込み、選択肢2を正しいと判断する。
なぜ間違えるか:通行権はあくまで公道に出るための「最低限の権利」であり、囲繞地の所有者の権利を不当に害することは許されないという趣旨を理解していない。
正しい理解:通行権=「自由」ではなく「迷惑最小限」というキーワードで覚える。
改正民法の内容を把握しておらず、選択肢1や4を条文にないものと誤って判断する。
なぜ間違えるか:学習教材が古く、改正前の判例法理のまま学習している、または改正点のインプットが不十分であるため。
正しい理解:「改正」や「新設」された条文は特に出題頻度が高いため、優先的に確認する。
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