平成10年(1998)本試験

5抵当権の実行時に所有権を保持する方法は「競落」だけでなく「代価弁済」や「抵当権消滅請求」がある点。

抵当権過去問

この問題の全体像

抵当権の効力、法定地上権、短期賃貸借、転抵当、及び抵当不動産の第三取得者の代価弁済等の権利に関する知識を問う問題です。

平成10年5
Aは、Bから借金をし、Bの債権を担保するためにA所有の土地及びその上の建物に抵当権を設定した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
  • 1Bの抵当権の実行により、Cが建物、Dが土地を競落した場合、Dは、Cに対して土地の明渡しを請求することはできない。
  • 2Aは、抵当権設定の登記をした後も建物をEに賃貸することができ、Bに損害を及ぼすことなく期間3年以内の賃貸借でその登記があるとき、Eは、建物の競落人に対して賃借権を対抗しうる。
  • 3Bは、第三者Fから借金をした場合、Aに対する抵当権をもって、さらにFの債権のための担保とすることができる。
  • 4Aから抵当権付きの土地及び建物を買い取ったGは、Bの抵当権の実行に対しては、自ら競落する以外にそれらの所有権を保持する方法はない。

この問題の詳しい解説

POINT
この問題のポイント
抵当権の実行時に所有権を保持する方法は「競落」だけでなく「代価弁済」や「抵当権消滅請求」がある点。
この問題は、6 つの視点でさらに深掘りできます
02
深度分析
抵当権の効力、法定地上権、短期賃貸借、転抵当、及び抵当不動産の第三取得者の代価弁済等の権利に関する知識を問う問題です。
03
知識背景
抵当権は、不動産の占有を移さずに債務の担保とする約定担保物権です。本問では、抵当権の不可分性や物上代位性、さらに抵当権が実行された際…
04
覚え方
「3年以内は賃借権が生き残る」「転抵当はOK」「代価弁済で所有権キープ」
05
試験のコツ
抵当権と賃借権の対抗関係 ・法定地上権の成否 ・第三取得者の救済制度(代価弁済等)
06
実務での見え方
金融機関が融資のために抵当権を設定する際、その不動産が賃貸されている場合、競売になったら賃借人を立ち退かせる必要があるか等のリスク判…
07
よくある間違い
{"mistake":"抵当権が実行されたら、所有権を守る方法は競落して自分で買うしかないと考える。","why_wrong":"代…
02深度分析
要約
抵当権の効力、法定地上権、短期賃貸借、転抵当、及び抵当不動産の第三取得者の代価弁済等の権利に関する知識を問う問題です。
法的根拠
民法第372条(抵当権の準用)民法第395条(短期賃貸借)民法第375条(転抵当)民法第377条(代価弁済)民法第388条(法定地上権)
論理の流れ
選択肢1は、土地と建物が別々に競落された場合、民法372条・388条の法理により法定地上権が成立し、土地所有者は建物所有者に対して明渡しを請求できないため正しい。選択肢2は、抵当権設定後の賃貸借でも、期間3年以内で登記があれば民法395条により競落人に対抗できるため正しい。選択肢3は、抵当権者が自己の抵当権を他の債権の担保にする転抵当(民法375条)が認められるため正しい。選択肢4は、抵当不動産の第三取得者は、自ら競落する以外に、代価弁済(民法377条)や抵当権消滅請求(民法379条)を行うことで所有権を保持できるため、誤りである。
重要な区別
抵当権の実行時に所有権を保持する方法は「競落」だけでなく「代価弁済」や「抵当権消滅請求」がある点。
各選択肢のポイント
  • 土地と建物の所有者が異なった場合、利用関係を調整するため法定地上権が成立し、明渡請求はできない。
  • 抵当権設定後の賃貸借でも、期間3年以内で登記があれば、民法395条により競落人に対抗できる。
  • 抵当権者は、その抵当権をもって他の債権の担保とすることができる転抵当が認められている。
  • 第三取得者は、債務を弁済して抵当権を消滅させる代価弁済等の方法により、競落せずに所有権を保持できる。
03知識背景
テーマ概要
抵当権は、不動産の占有を移さずに債務の担保とする約定担保物権です。本問では、抵当権の不可分性や物上代位性、さらに抵当権が実行された際の第三者への影響(法定地上権や短期賃貸借の保護)など、実務上非常に重要な論点が網羅されています。
歴史的背景
民法制定当初から抵当権制度は資本調達の中心でしたが、抵当権設定後の利用関係(賃貸借等)との対立を調整するため、短期賃貸借保護制度(395条)等の整備が行われてきました。なお、平成15年改正で短期賃貸借制度は廃止されましたが、本問は改正前の出題です。
関連法令
民法第369条(抵当権の内容)民法第370条(抵当権の効力の及ぶ範囲)民法第379条(抵当権消滅請求)民事執行法第59条(法定地上権)
体系的位置づけ
宅建試験の民法分野における「権利関係」の柱の一つであり、特に不動産の取引と融資の結びつきを理解するための中核となる項目です。
前提知識
抵当権の基本的な定義、優先弁済的効力、対抗要件(登記)、及び抵当権と賃借権の優劣関係(登記の前後)の基礎知識が必要です。
04記憶テクニック
語呂合わせ
「3年以内は賃借権が生き残る」「転抵当はOK」「代価弁済で所有権キープ」
ビジュアル描写
抵当権が設定された家に「賃借人」が入ってきた様子を想像。抵当権実行のハンマーが落ちても、3年以内の賃借人は盾で防ぐイメージ。
重要公式
短期賃貸借 = 3年以内
関連連想
「代価」を払えば「代わって」抵当権が消えると連想する。
比較表
【抵当権と賃借権の優劣】 1. 抵当権登記前の賃貸借:賃借権が勝つ 2. 抵当権登記後の賃貸借(3年超):抵当権が勝つ 3. 抵当権登記後の賃貸借(3年以内):賃借権が勝つ(当時)
05試験テクニック
出題頻度
毎年出題
重要度
A:最重要。抵当権は権利関係の得点源であり、頻出である。
出題パターン
  • 抵当権と賃借権の対抗関係
  • 法定地上権の成否
  • 第三取得者の救済制度(代価弁済等)
解法・消去法
「唯一の方法はない」「一切できない」といった絶対的な表現は、例外(代価弁済など)がないか確認し、誤りである可能性が高い。
時間戦略
抵当権の基本問題は即答できるようにし、迷った場合でも条文の趣旨(抵当権者保護か利用者保護か)から判断する。
06実務応用
実務シナリオ
金融機関が融資のために抵当権を設定する際、その不動産が賃貸されている場合、競売になったら賃借人を立ち退かせる必要があるか等のリスク判断に使われます。
実務への影響
抵当権付き不動産を購入する際、代価弁済によって抵当権を消滅させられるかどうかは、買主の資金計画に直結します。
ケーススタディ
ある企業が工場を購入したが、そこに抵当権がついていた。企業は競売にかけられる前に借入金を返済(代価弁済)し、抵当権を消滅させて工場の所有権を守った。
業界関連性
不動産売買における「抵当権の抹消」手続きや、ローン返済中の不動産売買において必須の知識です。
ニュース連動
不良債権処理や競売物件の購入に関するニュースで、抵当権や法定地上権の問題が取り上げられることがあります。
07よくある間違い
抵当権が実行されたら、所有権を守る方法は競落して自分で買うしかないと考える。
なぜ間違えるか:代価弁済や抵当権消滅請求という、金銭を支払って権利を消滅させる手続きを知らないため。
抵当権設定後の賃貸借はすべて競落人に対抗できないと勘違いする。
なぜ間違えるか:民法395条の短期賃貸借保護制度(当時)の例外規定を忘れているため。
抵当権者が自分の抵当権を他の担保に利用することを禁止されていると考える。
なぜ間違えるか:抵当権を一つの財産権として捉えておらず、処分の自由(転抵当)があることを理解していない。
解説は、まだ続きます
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