意思の不存在
意思の不存在とは、表意者が内心で意図していないことを表示した場合をいい、法律行為の有効性が否定される制度です。民法は、心裡留保(93条)、通謀虚偽表示(94条)、錯誤(95条)の三類型を定めています。取引安全と意思の尊重という二つの価値の調整を図るもので、類型により保護の方向性が異なります。
民法93条(心裡留保に関する規定)民法94条(通謀虚偽表示に関する規定)民法95条(錯誤に関する規定)
重要度: 重要
要点
意思の不存在とは、表意者が内心で意図していないことを表示した場合をいい、法律行為の有効性が否定される制度です。民法は、心裡留保(93条)、通謀虚偽表示(94条)、錯誤(95条)の三類型を定めています。取引安全と意思の尊重という二つの価値の調整を図るもので、類型により保護の方向性が異なります。
体系における位置づけ
民法(権利関係)は、私人間の権利義務関係を規律する法分野です。財産法(総則・物権・債権)と家族法に大別され、宅建試験では財産法が中心です。意思の不存在は、法律行為の核心である意思表示に瑕疵がある場合の処理を定める制度で、契約の有効性判断の基礎となります。
ルールの詳細
・心裡留保:単に内心と表示が異なるだけでは無効にならず、原則として有効です。ただし、相手方が悪意の場合は無効となります(民法93条但書)。
・通謀虚偽表示:相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効です。ただし、善意の第三者に対抗できません(民法94条1項・2項)。
・錯誤:意思表示に重要な要素についての錯誤があるときは、取消すことができます。ただし、表意者に重過失がある場合は取消しできません(民法95条)。
・無効の効果:意思の不存在による無効は、何人でも主張でき、追認によっても効力を生じません(民法119条参照)。
・第三者保護:通謀虚偽表示では善意の第三者を保護しますが、心裡留保では第三者保護規定がありません。
例外
・心裡留保の例外:相手方が表意者の真意を知っていた(悪意)の場合、その意思表示は無効となります。
・通謀虚偽表示の例外:善意無過失の第三者には対抗できません。登記の有無は第三者保護の要件ではありません。
・錯誤の例外:表意者に重過失がある場合、錯誤無効を主張できません。ただし、詐欺を理由とする取消しは可能です。
比較・対照
心裡留保は原則有効、通謀虚偽表示は原則無効、錯誤は取消可能と、それぞれ効力が異なります。第三者保護の有無も重要な区別ポイントです。
記憶テクニック
・「心裡留保は単独有効、通謀虚偽は二人無効」:心裡留保は単独で原則有効、通謀虚偽表示は二人が通謀して原則無効と覚える。
・「善意第三者には対抗できないのは通謀だけ」:心裡留保には第三者保護規定がないが、通謀虚偽表示にはある。
・「錯誤は取消、無効じゃない」:錯誤は取消しの対象であり、当然無効ではないと覚える。
事例で確認
「意思の不存在」はこう問われる
AはBに土地を売却する意思がないのに、Bと通じて売買契約を結んだ。その後、Bがこの土地を知らずに購入したCに転売した。CはAの真意を知らなかった。 AはCに対して土地の返還を求められるか。
結論:AはCに対抗できず、返還請求は認められません。
AとBの売買契約は通謀虚偽表示(民法94条1項)により無効です。しかし、BからCへの譲渡について、Cは善意(真意を知らない)ですので、AはCに対抗できません(民法94条2項)。したがって、AはCに土地の返還を求められません。
押さえる:通謀虚偽表示では善意の第三者が保護されます。登記がなくても第三者保護は認められます。
XはYから絵画を購入したが、後にこの絵画が贋作であることが判明した。Xは本物だと思って購入していた。Xには過失がなかった。 Xはこの売買契約を取り消すことができるか。
結論:Xは錯誤を理由に契約を取り消すことができます。
Xは絵画が本物であると誤認して購入しました。これは法律行為の要素に錯誤がある場合に該当する可能性があります。民法95条により、意思表示の重要な部分に錯誤があるときは取消しが可能です。Xに過失がないため、取消権が認められる可能性が高いです。
押さえる:錯誤は取消しの対象です。重過失がない限り取消しが認められます。
試験での狙われ方
出題傾向と対策
| 出題頻度 | 2〜3 年に 1 回 |
|---|---|
| 出題実績 | 過去 37 年で 9 回・9 年分・最新 2020 年 |
| 重要度 | B:重要。錯誤は民法改正で変更があり、出題可能性が高まっています。基礎概念として確実に理解が必要です。 |
| 解き方のコツ | 心裡留保は原則有効、通謀虚偽表示は原則無効、という対比を確実に覚えましょう。第三者保護の有無も重要な得点ポイントです。 |
よく問われるパターン
- 心裡留保・通謀虚偽表示・錯誤の要件と効果の正誤判定問題
- 第三者保護の有無を問う事例問題
- 無効と取消しの違いを問う条文知識問題
- 錯誤と詐欺の区別を問う問題
理解度チェック
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Q1【2014年 問2】代理に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはいくつあるか。 ア 代理権を有しない者がした契約を本人が追認する場合、その契約の効力は、別段の意思表示がない限り、追認をした時から将来に向かって生ずる。 イ 不動産を担保に金員を借り入れる代理権を与えられた代理人が、本人の名にお...
解答: 正解:2
二つ
【解説】解説 したがって誤っているものは「二つ」です。
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よくある質問
意思の不存在について
宅建の「意思の不存在」とは何ですか?
意思の不存在とは、表意者が内心で意図していないことを表示した場合をいい、法律行為の有効性が否定される制度です。民法は、心裡留保(93条)、通謀虚偽表示(94条)、錯誤(95条)の三類型を定めています。取引安全と意思の尊重という二つの価値の調整を図るもので、類型により保護の方向性が異なります。
「意思の不存在」は宅建でよく出ますか?
本試験では過去 37 年間で 9 回、9 年分で出題されています。出題傾向は「2〜3 年に 1 回」です。
心裡留保による意思表示は、相手方が善意であれば常に有効となる。
○正解。心裡留保は原則として有効であり、相手方が悪意の場合に限り無効となります(民法93条)。善意の場合は有効です。
通謀虚偽表示による意思表示は、善意の第三者に対抗できない。
○正解。民法94条2項により、通謀虚偽表示は善意の第三者に対抗できません。第三者保護が認められます。
錯誤による意思表示は、表意者に過失があれば取消しできない。
×不正解。民法95条により、取消しができないのは「重過失」がある場合です。単なる過失では取消しが可能です。
「意思の不存在」の覚え方は?
「心裡留保は単独有効、通謀虚偽は二人無効」:心裡留保は単独で原則有効、通謀虚偽表示は二人が通謀して原則無効と覚える。
・「善意第三者には対抗できないのは通謀だけ」:心裡留保には第三者保護規定がないが、通謀虚偽表示にはある。
・「錯誤は取消、無効じゃない」:錯誤は取消しの対象であり、当然無効ではないと覚える。
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