遺言
遺言とは、遺言者の死亡時に効力を生じる単独の意思表示です(民法960条)。被相続人の最終意思を尊重し、法定相続分とは異なる財産承継を可能にする制度です。遺言は法定の方式に従わなければならず(要式行為)、遺言能力(15歳以上)が必要です。遺言により、相続分の指定、遺贈、認知、後見人の指定など多様な内容を実現できます。
民法第960条(遺言の方式の遵守)民法第961条(遺言能力)民法第968条(自筆証書遺言)
重要度: 重要
要点
遺言とは、遺言者の死亡時に効力を生じる単独の意思表示です(民法960条)。被相続人の最終意思を尊重し、法定相続分とは異なる財産承継を可能にする制度です。遺言は法定の方式に従わなければならず(要式行為)、遺言能力(15歳以上)が必要です。遺言により、相続分の指定、遺贈、認知、後見人の指定など多様な内容を実現できます。
体系における位置づけ
民法(権利関係)は宅建試験の4科目の中で最も難易度が高く、特に相続法分野は受験生が苦手とする分野です。相続法は「相続一般」「遺言・遺贈」「遺留分」の3つに大別され、遺言はその中核をなす制度です。被相続人の最終意思を尊重する制度として、遺言の方式、効力、遺贈、遺留分との関係が学習の要点となります。
ルールの詳細
・遺言能力は15歳以上であれば有し、意思能力とは別に独立して認められる(民法961条)。成年被後見人でも事理を弁識する能力を一時回復したときは遺言可能。
・自筆証書遺言は遺言者が全文・日付・氏名を自書し、押印することが必要(民法968条)。平成31年法改正により財産目録はパソコン作成等も可能に。
・公正証書遺言は証人2人以上の立会いのもと、遺言者が公証人に遺言の趣旨を口授し、公証人が筆記・読聞きし、遺言者・証人が署名押印する(民法969条)。
・遺言は遺言者の死亡時に効力を生じる(民法985条)。遺言の撤回はいつでも遺言者の自由に行え、前の遺言と抵触する後の遺言や行為により撤回されたとみなされる(民法1022条、1023条)。
・遺贈には包括遺贈と特定遺贈があり、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する(民法990条)。特定遺贈は受遺者が放棄可能。
・遺留分は兄弟姉妹以外の相続人に認められ、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求できる(民法1042条)。平成30年法改正により物件返還請求から金銭請求に変更。
例外
・自筆証書遺言の方式違反は無効だが、法務局での保管制度を利用した場合は方式の不備が補完される(自筆証書遺言の保管に関する法律)。
・遺言者が遺言書を破棄したときは、その遺言を撤回したものとみなされる(民法1024条)。過失による破棄も撤回の効果あり。
・遺留分の放棄は相続開始前にも家庭裁判所の許可を得て可能(民法1049条)。ただし相続開始後の放棄は自由。
比較・対照
自筆証書遺言と公正証書遺言は使い分けが重要。包括遺贈と特定遺贈は権利義務の範囲が異なる。遺留分制度は平成30年改正で金銭請求に変更され、実務上の取扱いが大きく変化した点に注意。
記憶テクニック
・「いごん」は「い」つでも撤回自由(遺言はいつでも撤回可能)
・「じひこうしょう」→自筆・公正・秘密証書の3方式(順に方式が厳格に)
・「遺留分は2分の1、直系尊属は3分の1」→兄弟姉妹以外の相続人に認められる
事例で確認
「遺言」はこう問われる
Aは自筆証書遺言を作成したが、日付を書き忘れた。Aの死後、この遺言書が発見された。相続人は遺言の有効性を争っている。 日付のない自筆証書遺言は有効か?
結論:日付のない自筆証書遺言は無効である。
民法968条1項は自筆証書遺言について「その全文、日付及び氏名を自書」することを要件とする。日付の記載は方式の必須要件であり、これを欠く遺言は無効となる。最高裁も日付のない自筆証書遺言は無効と判断している。
押さえる:自筆証書遺言の方式要件(全文・日付・氏名の自書、押印)は厳格。一つでも欠けると無効になるため、公正証書遺言の利用が推奨される。
Bは遺言で「全財産を愛人Cに遺贈する」と記した。Bには妻Dと子Eがいる。DとEは遺留分を主張している。 妻Dと子Eはどのような請求ができるか?
結論:DとEはCに対し遺留分侵害額の金銭支払を請求できる。
妻Dと子Eは遺留分権利者(民法1042条)。遺留分は直系尊属の場合は相続財産の3分の1、それ以外(配偶者・子)の場合は2分の1。DとEはCに対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求できる。ただし、物件の返還請求はできない。
押さえる:遺留分は兄弟姉妹以外の相続人に認められる。平成30年改正により金銭請求のみとなり、受遺者は金銭を支払えば遺贈財産を保持できる。
試験での狙われ方
出題傾向と対策
| 出題頻度 | 出題なし |
|---|---|
| 出題実績 | 過去 37 年で 0 回・0 年分 |
| 重要度 | B:重要。相続法の中核的分野であり、基本事項を確実に得点したい。難問は消去法で対応。 |
| 解き方のコツ | 基本原則(遺言の方式、遺贈の種類、遺留分の割合)を確実に暗記。難問は深入りせず、消去法で対処。「すべて」「必ず」には例外を疑う習慣を持つ。 |
よく問われるパターン
- 遺言の方式要件(自筆証書遺言の要件違反)を問う問題
- 遺贈の効力・放棄に関する問題(承認・放棄の期間や効果)
- 遺留分侵害額請求の要件・効果を問う問題
- 遺言の撤回に関する問題(抵触する遺言・行為の効果)
理解度チェック
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Q1【2021年 問107】遺言に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
解答: 正解:4
遺贈義務者が、遺贈の義務を履行するため、受遺者に対し、相当の期間を定めて遺贈の承認をすべき旨の催告をした場合、受遺者がその期間内に意思表示をしないときは、遺贈を放棄したものとみなされる。
【解説】解説 したがって誤っている記述は[4]です。
Q2【2015年 問10】遺言及び遺留分に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
解答: 正解:4
遺留分権利者は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができるが、受遺者又は受贈者に対し、遺贈又は贈与の減殺を請求することはできない。
【解説】解説 したがって正しい記述は[4]です。
よくある質問
遺言について
宅建の「遺言」とは何ですか?
遺言とは、遺言者の死亡時に効力を生じる単独の意思表示です(民法960条)。被相続人の最終意思を尊重し、法定相続分とは異なる財産承継を可能にする制度です。遺言は法定の方式に従わなければならず(要式行為)、遺言能力(15歳以上)が必要です。遺言により、相続分の指定、遺贈、認知、後見人の指定など多様な内容を実現できます。
「遺言」は宅建でよく出ますか?
本試験の過去問データでは、この論点名で直接問われた出題は確認できませんが、関連する論点の中で問われることがあります。
遺言能力は18歳以上でなければならない。
×。遺言能力は15歳以上であれば有する(民法961条)。通常の法律行為能力(18歳以上)とは異なる。
自筆証書遺言は、遺言者が全文を自書し、日付と氏名を記載し、押印すれば有効に成立する。
○。民法968条1項の要件を満たす。ただし、日付は具体的な年月日の記載が必要であり、「吉日」等では無効。
公正証書遺言を作成するには、証人1人以上の立会いが必要である。
×。公正証書遺言には証人2人以上の立会いが必要(民法969条)。証人になれない者(未成年者、推定相続人等)に注意。
「遺言」の覚え方は?
「いごん」は「い」つでも撤回自由(遺言はいつでも撤回可能)
・「じひこうしょう」→自筆・公正・秘密証書の3方式(順に方式が厳格に)
・「遺留分は2分の1、直系尊属は3分の1」→兄弟姉妹以外の相続人に認められる
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